「儲けるための旅館経営」 その13
儲けの差は「飲料率」が根幹

Press release
  2009.10.31/観光経済新聞

 前回は課題の第2点として、低価格帯の団体を受けるか、あるいはコマ客対応の低価格帯商品の造成をするかに言及した。これは、GOPの確保、つまり「儲ける旅館」を目指す上で最大の課題といってもいい。同時に課題の第3点である「魅力ある料理の創出」と相関関係にあるといってもいい。そこで、GOPを確保して「儲けている旅館」とそうではない旅館の実体を、両極2館のデータを基に検証してみよう(下図参照)。

表の上段は、GOPを確実にあげている旅館であり、下段はGOPがまったく出ていない旅館だ。両者の差は「儲けているか否か」といった経営面での違いだけでなく、課題の1点目で指摘した「全体的な客数の減少」の反映とも連動している。ただし、客数の減少とは単なる数合わせの問題ではなく「儲けの出る客」の減少と考えた方が分かり易いだろう。

この場合の「儲けの出る客」とは、決して高額客だけを指しているわけではない。適切な例えとは言えないが、低額商品のみを扱う「1コインショップ」でも十分な儲けを出している点と、共通する部分がある。それは、価格帯に見合った儲けを出す仕組みにかかわっている。

 今回のテーマである「客数減少、低価格帯、魅力ある料理」を3題噺に例えれば、CS(利用客の満足度)によるメディア評価や利用客の口コミが客数減少に歯止めをかけ、低額客でも数さえ確保できれば儲けにつながる。そのためには「施設・サービス・料理」の3要素の中で、経営インフラの負荷が最も小さくてすむ「料理」にスポットをあてることが、顧客満足を高めるための、焦眉の急といえる。結論から言えば、料飲サービス料(料飲高・料飲率)のコントロールにつきる。

 さて、グラフの詳細解析は次回以降に行うものとして、今回は顕著な部分のみを指摘しておきたい。

 第1として室料(@宿泊関連人件費A販管費B建物減価償却費CGOP)をみると、儲けを出している旅館では、低額客(7000円)でも5500円を確保している。これに対して赤字旅館では、低額客の室料は2500円しか出ていない。ビジネスホテル並みの室料(1室10u程度で4500円)にさえ満たない。

一方、料飲サービス料(@原材料費A人件費=調理、料理輸送、接客、下膳、洗浄などB消耗品類)では、儲けている旅館は価格帯によって高額客と低額客で、それぞれの価格帯に合わせて相応の下降線を描いている。これに対して赤字旅館は、高額客の料飲率が30%台にとどまり、逆に低額客は60%を超えている。「安くてもいい料理を食べさせる」と言えば聞こえはいいが、実はその背景に高額客の料理への不満がある。次回はその点を解析する。