「儲けるための旅館経営」 その117
GOPの出る料理運営コストB

Press release
  2012.3.24観光経済新聞

GOPの出る料理運営コストへ見直すことが、焦眉の急であることは間違いない。これは、単なる数字のマジックでもないし、概念的な理論だけでもない。宿泊単価1万2000円に対しては、料理運営コストを3500円にとどめることが、GOP15%以上を目指す上で前提条件と言っていい。

まず、料理運営コスト3500円について考えてみよう。これは単価1万2000円の29%に相当する。従来の発想だと、極めて低い比率だと受けとめられるかもしれない。この段階で現場的な発想のまま「それでは無理だ」と決めつけてしまえば話は進まない。だが、最も肝心なことは、経営が持続可能なGOPを確保することだ。経営が成り立たなければ、すべては無に帰してしまう。そこで、単価1万2000円のGOP15%を計算すると1800円となる。

単価1万2000円から料理運営コストとGOPを差し引いた残りは6700円となる。本シリーズでは、一般的なビジネスホテルの室料をたびたび引き合いに出してきた。客室の広さや調度だけを比べても、旅館とビジネスホテルでは、大きな差が歴然としている。加えて温泉をはじめとするパブリックスペースの維持運営を考えると、6700円でもかなり厳しいことは改めて説明するまでもない。

また、モデルケースで例示した宿泊単価1万2000円は、価格志向の圧力が強まる中で、かつて1万8000円以上を想定して初期投資がなされた経緯もあるはずだ。総合的に捉えると6500円では厳しいのが当然なのだが、マーケットに対応する上で「背に腹は代えられない」のが実情だ。したがって、1万2000円でもGOP15%以上を確保できる対応策を、真剣に考えなくてはならなくなる。

さて、料理運営コスト3500円をブレークダウンしてみよう(下表)。シミュレーションは、夕食で接客係1人が対応する客数を10人と20人のケースで想定している。まず気付くことは、10人対応だと料理運営コストが4000円になっていることだ。従来型と言わないまでも、部屋出しや食事処での対応は、このケースにならざるを得ない。

一方、20人対応のシミュレーションでは、料理運営コストが冒頭のGOP15%確保の範囲3500円に収まっている。両者の違いは、わずか500円だ。しかし、この500円は単価に対して4%ほどであり、視点を換えるとGOPで4%の違いになって表れる。GOP15%確保が難しい状況下での4%は無視できない。

このシミュレーションは、接客係の対応客数を変えるだけで、料理運営コストに違い出ることを示している。だが、それだけでは絵に描いた餅に過ぎない。実体化をさせるためは、料理提供の方法を抜本的に見直す必要性を、同時に示唆している。原材料費や諸人件費を現実に落とし込むとき、前述した「それでは無理だ」の論は避けなければならない。どのように工夫をすれば、ブレークダウンしたそれぞれの額面で賄えるかを考える姿勢が不可欠だ。

方法はある。これまでに提起してきた「接客の可変性」を前提にオールラウンド化を図り、適切なシフト運営などのオペレーションを再構築することだ。価格競争を乗り切って経営を持続させるには、それが最初に取り組む課題でもある(つづく)