「儲けるための旅館経営」 その100
カギを握る料理運営コスト

Press release
  2011.10.15観光経済新聞
前回は、コストの概念として「室料」「料理運営コスト」の2大分類を示し、GOPの所在場所を室料とした。そして、料理運営コストには工夫の可能な余地があることを指摘した。この点に関しては、「室料の確保」と言う表現で、これまでも再三にわたり述べてきた。

室料の確保とは、前回も述べたように室料が@宿泊関連人件費A販管費B建物減価償却費CGOPを包含したものであり、その中の@〜Bについては、客単価や経営側の意向などから単純に変えられるものではない。だが、適正な室料が確保されていなければ、しわ寄せがGOPに及ぶのは当然のこと。さらにいえば、料理運営コストが客単価に対して適正でなければ、そのしわ寄せが室料に波及する。2大分類の相関関係は、その意味で極めてシンプルであり異論をはさむ余地はないはずだ。そうなると、室料で@〜Bの可変が難しいとすれば、料理運営コストに手を加えるのが当然の帰結となる。

室料と料理運営コストの関係を示す実データを紹介してみよう。GOPを確実にあげている旅館(下表上段)とGOPがまったく出ていない旅館(下表下段)は、表中の「料飲高(料理運営コスト)」に顕著な違いが見てとれる。これは、料理運営コストに可変のカギが潜んでいることを如実に示している。

表中の「室料」をみると、GOPの出ている旅館では、低額客(7000円)でも5500円を確保しているのに対し、出ていない旅館は、低額客の室料が2500円でビジネスホテル並みの室料(1室10u程度で4500円)にさえ満たない。

 一方、料理運営コストでGOPの出ている旅館は、価格帯によって高額客と低額客で、それぞれの価格帯に合わせて相応の下降線を描いている。これに対して出ていない旅館では、高額客の料飲率(単価に対する料理運営コストの比率)が30%台にとどまり、逆に低額客は60%を超えている。コストの額面とも言える料飲高で見る限り、どちらの旅館も客単価によってスライドしているが、比率に直して捉えてみると、スライドのベクトルが正反対であることがわかる。いい換えれば、それが料理運営コストの見直しによってGOPがアップできる可能性の証左でもある。

これらのデータは、仔細に解析すると問題点と是正措置がみえてくるが、ここではコストの2大分類に照らして数値化するだけで、GOPの出所である室料に大きな差があり、とりも直さず料理運営コストの見直しが室料確保に直結している点を理解してほしい。

また、料理運営コストの見直しは、CSやESを損なうものでなく、むしろ向上につながることも改めて付言しておきたい。それが工夫なのだ。(つづく)