前回に続いて原価意識にかかわる課題を、GOPの観点で考えてみよう。営業担当者の原価意識やコスト意識が乏しいと、それ自体がGOPをとる上で、前回触れたサーチャージ以前の困難要因になる。かつて、長いものには巻かれろではないが、多少のムリを受け入れても実を得られれば良しとする考え方があった。しかし、そうした右肩上がり時代の営業センスは、もはや過去のものとして決別しなければならい。
だが、経営維持のために不本意な安価の団体も受けざるを得ない状況は、現実として否定できない。そのような場合こそ、営業先で求められた変更に対して、いとも簡単に承諾してしまう姿勢は改めなければならない。例えば、旅行業者から団体の送客を受けようとした場合、差別化の一環としてオリジナルメニューを求められる。一方、各旅館にはプロトタイプといえる独自のメニューがある。このメニューは、団体の単価が8000円だとすれば、原価は1600円ぐらいで構成しており、実勢の売価とコストが整合しているはずだ。それを簡単に覆す形は、多少乱暴な言い方だが、カモがネギどころか「鍋まで背負ってくる」というような状況とさえいえなくもない。これも、GOPを悪化せせる要因なのだ。
GOPを悪化させるもう1つの要因は、経営者の経営才覚ともいえるものだ。経営者は、売上維持を常に意識しなければならない。ところが、それに対する意識が薄くなってきている。現象的な面からみると、不動産業としての意識が薄らいで料飲先行になる。また、客単価を下げないためには、不足分だけを安売りで確保するのだが、これにも限界がある。そこで、人件費に手をつけて従来のCSさえ維持できないような要員の間引きをすることになる。
では、どうすれば経営を維持できるかを考えなくてはならない。そこで、経営優先のコスト管理意識が求められるわけだ。それがシステムの再構築でもある。
例えば、団体の単価から弾き出してかけられる接客要員は、客40人に対して接客係が1人ぐらいだったとする。ところが営業先から15人に1人ぐらいの接客を求められ、それを実行しないと次回の送客がなくなってしまう。GOPを念頭に対応するには、見せ場では総動員をかけておき宴会など動きの激しいシチュエーションでは、接客とバックヤード要員で求められている接客体制を敷く。人数だけをとらえれば、決してごまかしているわけではない。
こうした考え方の先にあって、しかも妥当性をもたせるのが、これまで述べてきた人員の再構築という手法だ。その背景には「単価の2局化」という状況がある。平たく言えば「安い・高い」の2局化が進んでいる。マーケットの実勢に照らすならば、安値先行で「7対3」ぐらいの2極化だろう。そうした「7」の客層を満足させるには、例えば、食事の提供形態をバイキング方式にするなど、徹底したコスト意識が求められる。バイキング方式ならば、コストを勘案したときにGOPがなんとか確保できるからだ。それにもかかわらずレストランや部屋食に固執するとGOPがとれずに、結果はおのずとみえてくる。
バイキング方式は、安い客層へのみの施策ではない。かつて、北海道地区がパック旅行の洗礼を受けたときに、バイキング方式が主流となった。それを経たことで、食事処や部屋食などでもGOPの出せる客層の取り込が可能なまでに再構築が進んだ。一定のGOPを確保し続ければ、それが基礎体力となって次の施策へ打って出ることを可能とする。
再構築とは、まさに経営者の才覚を発揮する意識改革ともいえる。そして、一定規模以上の大型と称される旅館は、2局化した2つの単価を同時に受け入れる2つのオペレーションを明確に区分しながら、さらに同時に進行させる必要がある。「客単価が低くなった」と嘆く時代は終わった。発想を変えてそれを受け入れながら、同時に基礎体力を蓄えることが維持の切り札となる まさにGOP重視の経営が不可欠なのだ。
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