「求める理想は実現する」 その6
予約作業の現場と改善点

Press release
  2006.05.13/観光経済新聞

 前回は、現状の転記とタリフの背後にある問題点を考えてみた。このことは、実をいえばすでに述べたように、予約部は「宿泊前日までの総指揮者」というスタンスと、システムとして捉えた場合の「データコンバート発想の欠如」と大いに関連している。具体的には次のように整理できる。@電話予約での入力A電子予約での入力B予約内容の変更C入力事項の確認――などにおいて、総指揮者としての役割が認識されていない。また、データコンバートの発想がないために、他部門との情報共有化がされていない。したがって現状では、言葉として「予約販売管理」といったものがあったとしても、その業務に求められる社内的な役割は、はなはだ不明瞭だといわざるを得ない。
項目別に現状と改善点を考えてみよう。第1点の電話予約では、これまで指摘してきたように入力時点で大きな課題をかかえている。とりわけ、今後も続くであろう低価格志向の中で売上拡大を目指すには、当然ながら客数の増加を図らねばならないが、入力時の煩雑さが正確さを損なう要因になっている点に留意しなければならない。客数の拡大と正確さの低下は、単純な比例計数では捉えきれないのだ。入力の煩雑さを放置したまま客数だけが増加すれば、業務担当者の負荷が拡大する。これに対して従来の発想で対応しようとすれば、予約担当要員を増員しなければならないが、それはコスト増加に直結するものであり、旅館の置かれている現状に照らせば最悪の選択肢に近い。ジレンマともいえるこうした状況を理系の筆者的に表現すれば、負のエネルギーであるエントロピーが蓄積され、ある時点でカタストロフィー(大破局)が引き起こされることになる。
いずれにしても、入力作業量そのものの拡大は「分母の拡大」であり、それ自体はプラス要因に違いないのだが、そこには旅行業者主導の多品種化をはじめ、従来からいわれてきたニーズの多様化への対応などさまざまな背景があることを忘れてはならない。もっとも、こうした問題は客数の増加が実現することで、より明確に顕在化するものであり、現時点で捉えると最終的な部屋割り作業での業務遅滞といった問題の方がリアルだ。
したがって、これらを改善する当面の施策は、@入力の確実を期す仕組みの導入A予約入力項目と会計清算の標準化を行うシステムの導入B作業の単純化・平準化・標準化を推進するとともに「提案型予約体制」を確立する――などが挙げられる。なかでも、入力の正確さや単純化・平準化・標準化を図るには、実情に即した形で入力事項を簡素化することが急がれる。
第2点の電子予約では、すでに指摘したようにデータコンバートの問題が大きい。具体的にいえば、社内システムで行っている予約項目とホームページなど電子予約の項目が異なるために、データがコンバートされず、結局は再度の手入力を行っている現実だ。その改善策としては、電子予約項目を社内予約項目に変換するシステムの確立が必要となる。
第3点の予約変更は、意味あいこそ知っているが、現実には対応が遅れている事項の1つといえる。日々の予約業務の実態をみれば問題点は明らかだ。つまり、変更があるたびにハンギングホルダーから前回受付時の予約伝票をはずし、応対をしながら書き換え(あるいは入力)ている。前回伝票が即座に見当たらなければ、とりあえず新規伝票やメモ書きをしたりするが、それらが後々に一人歩きをする危険性も多分に含んでいる。まさに混乱の極みだが、これらは「変更伝票」というシステム発想で改善できる。
第4点の入力確認は、当日受付けや変更の確認がなされていないことだ。これは、データクリーニング時点での作業量が大きいために割愛されているケースが多い。また、確認一覧の中に必要な全項目が出力されていないというシステム的な問題もある。つまり、手配品やVIP対応などができないという問題を引き起こしている。これには、データ交換(CSV)によって必要な時・場所で出力できるようにするなどの改善策が求められる。

(つづく)