予約販売管理をシステムとして捉えると、作業項目としては@受付けA入力と変更B中期および週期の館内手配制作書作成C先行先行の解析D先行予約分析&報告書作成E部屋割F(直前の)館内手配書作成G受入れ準備資料の作成H看板作成Iチェックイン・会計入力J情報伝達の共有K売上締め処理――といった作業フローに整理できる。
前回は、電話による予約受付作業のあり方を考えてみた。その中で、適正なデータ入力と入力データの精査などを必要とする背景について触れた。今回は、具体的なデータ入力の問題点に進む前に、予約受付について電話とそれ以外のケースを含めて現状と課題を整理しておこう。
まず、電話受付では、多くの旅館で該当するものに帳票類の煩雑さがある。つまり、タリフ類が複雑化している。もっとも、現状では旅行業者や企画商品ごとに多数のタリフが必要であり、価格施策にダブルスタンダードやトリプル以上の標準を作為的に講じているわけではない。結果として、そうならざるを得ない実情がある。この問題は、現行方式を続けるかぎり、根本的な解決策は見出せない。問題は、帳票類の煩雑が電話で聞きながらの記入にミスを生じさせているという現実にある。いわば予約受付は、すべての出発点なのだ。そこに不備があれば、最終的に宿泊時点での問題となる。
これには、担当者レベルでの作業に対する取組み姿勢といった意識の問題もあるが、すべてがそうした精神論で解決できるわけではない。原点は、聞き取り項目のリストがフォーマット化されていないことにある。この点に関しては、これまで構造改革を提唱する中で何度も指摘してきたことの1つである業界特有の「できレース」的な1面がある。言葉悪くいえば、聞き取り項目のフォーマットを描くと、極めてシンプルなものでしかない。それに則って聞き取り作業をすれば、必要項目は誰にでも押えられる。ところが、「予約受付はすべての出発点」であり、大きな意味があることを生半可に知っているために、担当者はもとより経営者も「錬度」が必要といった認識の仕方をしている。これでは、作業の標準化もパートの活用もあり得ない。つまり、パートでも誰でもが、短時間で全項目を確実に聞き取り記入のできるチェックリストの整備が急がれる。だだし、前述したように価格施策が複雑なために「言うは易し、行なうは難し」で対応が遅れている。繰り返すが、それゆえに「錬度」の問題として根本的な改正がされないままきている。
さて、最近の予約受付で台頭してきたのがウェブ上での予約対応だ。サイバーエージェントとの提携は別にしても、規模の大小を問わずネット上にホームページを開設するのは、もはや販売チャンネルの1つとして常識化している。だが、こうしたホームページ上の予約に対しては、ほとんどの場合に電話での聞き取り手法が、ネットに上げたチェック項目の記入に置き換わった程度であり、最終的な入力ではオペレータの手が必要になる。現状のITレベルとシステム改修があれば、データをコンバートすることは難しくない。再入力時にミスがあれば、電話対応と同じ末路になってしまうのだ。
そこで、予約受付の手段が電話でもウェブであっても、今後を展望する時には「電子タリフ」の採用が重要なポジションを占める。余談ではあるが、こうした「電子化」を提案すると共通して返ってくる反応の1つに、紙に手書きしていた文字や数字を、キーボードからコンピュータに移し替えたことをもって電子化とする受けとめ方だ。極端な話だが、そうやって入力された情報をプリントアウトし、それをバインダーに綴じて必要なときはページを繰る――という形では旧来と何ら変らない。
本題に戻ろう。こうした電子化で肝心なことは、入力されたデータが必要なセクションで共有化されることだ。そこには「データコンバート」の発想が欠かせない。冒頭に示した作業項目のフローに対して、底流には予約受付の初期段階で入力されたデータが流れ続けている。ゆえに「総指揮者」なのだ。
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