「求める理想は実現する」 その3
宿泊前日までの総指揮者

Press release
  2006.04.15/観光経済新聞

 予約受付のあり方を考えた時、問題点の1つは担当者の対応を含めた人的スキル。もう1つとしてコンピュータシステムの問題がある。対応時に必要なデータが、必要に応じてすぐさま手元で閲覧できるか否かなど、『検索』と『処理』の処理速度に問題がある。そして、受け付けるだけではなく重要な関連事項として、「どう正確に、間違いなく、館内に伝える」ことが予約の最大使命である。どんなに満足のいく受け答えで予約を成立させたとしても、事後のデータ出力に不手際があれば――館内への指示文書が適切に出力できなければ作業手順に混乱をきたし、ひいてはCSを達成することができない。
そこで予約部の役割を考えてみると、このセクションは宿泊前日までの館内運営で「総作業指揮者」と位置付けられよう。そして、当日の指揮コントロールはフロント部にバトンタッチされる。ところが現実をみると、予約部の作成した予約表を、再度フロントが部屋割りなどを行っているケースがある。つまり、予約部は大まかな部屋割りをつくる作業まではしているが、フロントが再度、予約部の部屋割りを行っている2重作業が問題である。
なぜ、こうした作業になってしまうのか。そこには2つの問題がある。1つは、フロント部が自分たちの指揮がしやすいように当日のコントロール体制を設計すること。そうなると、全館レベルで対応しなければならない予約状況とは、ある意味で異質な体系になってしまう。もう1つは、精査の過程で「ユウレイ」などが出てくること。これは、予約部の確認不足が主な要因なのだが、フロント部が夜中に精査するのを当然とするような館内運営の仕組みそのものにも問題がある。予約部の作業が「荒い」というのは、そうした意味も含んでいる。これでは、前日までの総作業指揮者としての役割が、いつまでたっても果たせない。
そこで、構造改革として常に指摘している「モノの動き・ヒトの動き・意識の動き」に対する捉え方が、ここでも問われることになる。つまり、「モノの動き」を精査せずに「ヒトの動き」を決めようとする姿勢が、こうした予約部・フロント部の対応にみてとれる。
例えば、前号で例示した受付対応を思い起こしてほしい。1日100件の予約に対して、1件10分で対応したと仮定すれば、計算上は2人の担当者で済むはずだ。ところが6人の担当者を配置してもこなせない場合がある。これは、電話リレーションシステムの概念がないためだ。電話が鳴った時に、1番目の人は50件に対応するが、次の人は30件、その次ぎは10件…といった具合に、作業内容に均等性がない。結果として、運営管理の問題点を『予約受付だけでない全ての対応をしなくてはいけない』という抜本解決意識がない。「だから仕方ない」という諦観がそこにある。しかし、構造改革の観点にたてば「否」といわざるを得ない。というのも、問合せと受けとめている電話には、大別すると2つある。1つは、空室状況や料金をはじめ一般的な意味での問合せだ。個人旅行客が宿泊をしようとすれば当然のことであり、予約成立へむけて最大限の努力で応対しなければならない。もう1つは、予約受付時の確認不足の『再確認』が多く存在している。そうだとすれば、本末転倒といわざるをえない。こちら側から先に確認をしておけば、本体はかかってこなくてもいい確認電話だ。前述したように予約部が「宿泊前日までの館内運営で総作業指揮者」といった位置付けが明確であれれば、その一連の作業範疇に含まれている。
 この点について次のように例えることができる。「だろう」から「かもしれない」への意識の変化だ。つまり、「電話がかかってくるだろう」と受身の態勢で待ち続けるのか、それとも「かもしれない」と事前に対応を考えて行動に移す積極性をもつということ。前者は、どこまでいっても「発生→対応」の泥縄的であり、後者は適正に入力と加工がなされたデータを踏まえて「未然→対応」であり、計画的に進めることができる。極論すれば「かもしれない」が、ここでのカギともいえる。

(つづく)