「旅館再創業」 その74
労働時間ミクロ解析が進む

Press release
  2006.01.28/観光経済新聞

 サゴーロイヤルホテルの構造構造改革を同時進行の形で書き進めているが、ここでちょっと寄り道をしてみたい。というのも、前回の指導会議では、サゴーロイヤルホテルが満館であったことから、私は浜松駅に隣接するサゴーターミナルホテルに前泊した
 ターミナルホテルは、客室90室(シングル73、ツイン4、ダブル13)で、館内レストランとして本格的和食処「高砂亭」がある。
また、サゴーエンタープライズでは、このターミナルホテルのほかに、浜松市内の繁華街に浜松サゴーホテル(同196、同14、同3、レストラン=新和風酒処「珊瑚茶屋」)、大型駐車場完備で連泊にも対応したサゴーイン(同151、同16、同10、レストラン=フレンチ「マリポーサ」)の3ビジネスホテル、合計480室を経営している。
前泊したこの夜、私は館内レストランの高砂亭で、夕食にアジのタタキや串焼き、煮物、鍋物など好みの料理をオーダーした。
さて、なぜこのような事柄に触れたかを語らなければならない。結論からいえば、泊食分離の実態がそこにあるのだ。
ビジネスホテルの宿泊費はおよそ5〜6千円、私の摂った夕食が3千円強、それに朝食が750円で、締めて1万円ほどの計算になる。しかし、すべて館内消費ではあるが、「1泊2食・1万円」ではない。
私は泊食ともに満足した。それに、社長の小野晃司によれば、ビジネスホテル部門は利益を出しているとのこと。つまり、ビジネスホテル部門は、不動産業として構造的に利益が出る。一定の稼働率を設定し、売れ残っていれば「空気を泊めるよりは」との施策を展開すれば、相応のプロフィットが創出される。同様に館内レストランは、飲食業として市場動向をにらみながらメニューや原価率を設定し、利益確保を目指せばいいことになる。
利用者の側では、素泊まり・1泊朝食付、あるいは館内レストランで夕食というどの形を選んでも、相応に満足できるし、ホテル側も夕食まで選択されればダブルチャージでプロフィットが確保できる。そうなると、これが宿泊業の原型だといえる。
私は、翌朝の指導会議の前に、そうした感想を挨拶代わりに小野に語った。そして会議が始まった。
今回の会議は、数えて8回目。前回は、要所々々で意見を織り混ぜた小野が、前々回以前と同様の寡黙になっている。例えるなら、仏像のような柔和な顔でプロジェクトメンバーの言義を見守っている。その横顔は、人材を育ててきたことへの自負ともいえるものが漂っているようだ。自分が言わなくてもそれぞれが成すべきことを理解し、必要な行動をとるだろうとの期待感がみてとれる。少なくとも私には、そんな思いが感じられた

会議の第1課程は、プロジェクト委員による労働時間管理の実態報告と指導。ほかに人件費のあり方と今後の方向性、人事考課制度のあり方などだ。
これまでの経営指導会議を振り返ってみると、フロント部門は毎回リポートをあげてくるのだが、他の部門からは出ていなかった。そこで、他部門からも出すようにした。それが、労働時間管理の実態報告ということになる。その結果、みえてきたことがある。
例えば、接客や館内運営での平均作業時間(1時間あたりどれだけの作業をしたか)をみると、その中の備品セッティングでは、最初のころは100やった日もあれば40で終わった日もあり、いわゆるバラつきがみられる。ところが一定の期間が過ぎると連日100がキープされるようになってきた。つまり、ミクロ解析の世界に踏み込んで、それを確実に行っていると、基礎数字の顕在化につながる世界に到達する。
もっとも、ここサゴーロイヤルホテルでは、作業者のスキルが一定レベルに達していたために、ミクロ解析の結果を理解するとともに、それを実際の作業に反映させるスパンも比較的短期間ですんだともいえる。そこには、作業者個々が自分のアベレージを「自分で運営し、自分で反省し、自分で改善する」という構図があった。

(つづく)

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