サゴーロイヤルホテルの構造改革では、実情に応じた臨機応変の対応も行っている。だが、基本線は崩せない。その1つがタテ割り組織図の改革だ。
配膳システムを導入したことで、接待係が送迎などでどんどん表に出ていける体制に変った。その理由の1つは、組織がタテ割りではなく縦横へ有機的に機能し始めたからだといえる。構造改革では、このタテ割り組織の改革が不可欠だ。
例えば、サゴーロイヤルホテルには、専用の朝食バイキング会場がある。ここの陣容は、専任の課長・男性社員3人・女性社員2人・パート1人の重装備だった。というのも、朝食の設営から始まって最後の食器洗浄までを、1部署として取組む独立した大きなディビジョン(部門)を構築していたからだ。
おまけに、そのバイキング会場は、組織図としてフロントの下部に置かれていた。逆にフロントは、バイキング会場まで背負うことで、20人ほどの大所帯になっていた。そこには、見送りなどのサービスにかかわる社内機構としての事情もあった。いい換えれば、接待係が朝の出勤をする必要のない仕組みが、フロントを肥大化させていた。
というのも、ここサゴーロイヤルホテルでは、接待係の一般的な勤務形態である中抜け勤務をせずに、全員が午後1時に出社して10時まで働く勤務体系を構築していた。したがって、朝の食事から見送りまでは、フロント課だけが対応していた。フロントの人員が非常に厚かった理由は、そこにある。
余談だが、バイキング会場についてだけみれば、ここに見られるようなケースは、決して珍しいものではない。旅館ホテルの中には「バイキング部」といった部署を設けているケースも、決して少なくはない。そうした事例は地域によって差異もあるが、概ね次ぎのようなことがいえる。
夕食が部屋食・宴会場・バイキング会場などに分かれるケースは多々ある。そうした場合にタテ割り組織だと、オール小間客の場合はバイキング会場が忙しくなり、宴会場は閑を持て余す。逆に団体が多ければバイキング会場は閑になる。それにもかかわらず、各部署のオペレーションはそれぞれ異なって独立している。部署の垣根がそうした現象を引き起こし、同時にそれはセクショナリズムにもつながっている。
サゴーロイヤルホテルのバイキング会場を運営するオペレーションは、そうしたタテ割り組織に等しいものだった。そこで、バイキング会場についていた専任スタッフを実質的に解体して、後方運営と連合させる組織図に組替えた。
当然のことながら、バイキング会場には昼洗浄があることから、それを夜間洗浄とジョイントさせようと図った。ところが、そこでの運営効率について、一時期は大きな議論が起こった。結果は、数回前に記した高山グリーンホテルへの見学ツアーとなり、現在ではそれを踏まえた新たな手法が定着をはじめている。
これらの経緯について、「自分たちは最高の運営をやってきた」という自負をもつプロジェクト委員がいった。「プロの目で見てもらって以前より全てよかった」と。
構造改革を指導・推進する側としては、予想どおりの結果が出ているのにすぎなが、現場では新たな驚きとして映ったのかもしれない。それは、それで歓迎すべきことだ。
さて、タテ割り組織の改善は、視点を換えると「人員の共有化」といえる。それがどのような意味かといえば、構造改革の視点からみれば、バイキング会場も1つの宴会場に過ぎない。そこに洗浄班がいて、別の部署にも洗浄班がいる。人員を共有化できれば、それぞれの洗浄班に潜んでいた「ムリ・ムラ・ムダ」が一カ所集約される。それを全社的な視点で捉えれば、全体としての効率化が図られるわけだ。
全社的視座の必要性は、ほかにもある。例えば、全社的視点で効率化が進む一方、この夏の利用客アンケートは、繁忙期として初めて高い評価点を得ることができた。構造改革を推進するスタッフの努力は、確実に成果を掴みつつある証左といえる。
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