「旅館再創業」 その67
超タイトな現場視察と会議

Press release
  2005.11.19/観光経済新聞

 サゴーロイヤルホテルの構造改革は、従来の手法と異なる要素が幾つかある。TQMで訓練された従業員のスキルを、最大限に引き出すための現場主導もその1つだ。それと、切羽詰まった利益構造の変革に迫られたものでもない。
今回のスタンスは、当初からポスト万博(愛・地球博=今年3月25日〜9月25日)を見据えた構造改革を「ゆっくり進めよう」というものだった。いい換えれば、集客面での「目玉イベント」で得た余力の中で、さらに将来への地固めが企図されていたともいえる。
普通ならば、構造改革の提案を受け入れた今年1月時点は、活況が予想される眼前のお祭り気分に圧されて、先々よりも目先の取り込みに奔走するはずだが、「それは、それ。将来構想は別物」と割り切った社長・小野晃司の力量に、私は共感を覚えた。
だが、構造改革を指導する側にとって、そこにはある種の障壁もある。通常期よりも多忙な時期に、運営変更を同時進行させなければならないという現実。これは、指導をする側もされる側も辛い。
さらに、あるコンサルタントは、「ビッグイベント(万博)のリバウンドに晒されるのが、火を見るよりも明らかな状況下で、なぜ引き受けるの?」と忠告の言葉を投げかけてきた。いわんとする状況は、私にもわかる。コンサルが成功しても、お客さまそのものが減少期のサイクルに入っていれば、目先の目にみえる効果は得難い。いわば、コンサルの実効が疑問視されかねないからだ。
しかし、視点を換えれば「ビッグイベントに備えて体制づくりを」と勧めるコンサルの方がおかしい。仮に無策であったとしても、イベントが始まれば、それなりの集客が可能だからだ。もちろん、ビッグイベントを前にそうした取組みが必要なケースも少なくないし、それが将来へのステップになる場合もあるが、そうした一般的なコンサルと私の実践コンサルは、根本的に違う。
構造改革とは、小手先の変化で目先の小さな効果を目指すものではないのだ。それだけに、コンサルのワクを越えた一体感のもとで推進する必要がある。
例えば、第6回指導会議の実態を紹介してみよう。タイムスケジュールは、極めてタイトで、予定がびっしりと詰め込まれている。
この時、私は午後10時にサゴーロイヤルホテル入りをした。すぐさま夜間食器洗浄の現場視察を行い、これが11時まで続いた。翌朝は、午前6時から9時まで朝食バイキング会場のセットとリセットの現場視察、9時から10時半が昼食器洗浄・備品準備・バイキング会場ドンデン・調理場食器準備などの現場視察。10時半から正午までは、シフト管理のあり方や運営のあり方をテーマにした館内運営指導会議を行った。
午後は、1時から2時半が調理場盛り付け・バイキング会場リセットの現場視察、2時半から4時がフロント・接客課合同指導会議、4時から5時半が調理場運営指導。翌日は午前9時から11まで全部署指導会議を行い、これまでの労働管理の反省点と今後の管理のあり方、あるいは構造改革推進の勤務管理と運営のあり方などを説明した。
滞留時間は、2泊3日といっても延37時間。起きてから寝るまで、食事の時間を除けば、作業現場の視察と指導、会議で大半を費やしている。
ゆえに私がハードな実践指導で「大変だ」などという気持ちはない。むしろ、通常の業務をこなしながら視察・指導に対応する現場スタッフ、社内での構造改革プロジェクトメンバーに大きな負担がかかっているのは確かだ。しかし、それを当面の課題として的確に捉え、真摯に取組む姿勢がひしと伝わってくる。
いま、サゴーロイヤルホテルの構造改革は、越えなければならない幾つかのハードルの中で、最初のハードルを跨ぎかけて着地が目前に迫っている。だが、その先には「シフト強化」という2番目のハードルが待ち構えているのだ。
こうした現実が意味するものは、経営陣と現場、それにコンサル一体の動きこそ「成否のカギを握る」と帰結できる。



(つづく)

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