高山グリーンホテルで運営変更を進めている4部門の1つが、飛騨物産館だ。その名のとおり高山の物産を一堂に集めたみやげ物販売施設だが、一般的な旅館の館内売店とは、規模も運営形態も異なる。一言でいえば、大型のみやげ専門店に匹敵する。
観光旅行での「みやげ」は、一般論としてみるならば「みやげ離れ」といった言葉に象徴される傾向も否めない。だが、ニーズが減退したのではなく、買いたいものがみつからない、といった状況が一方にある。売り方を工夫し、健全な経営のできる運営形態を整えれば、大いに期待のもてる分野でもある。なぜなら、旅とみやげは切っても切れない関係にあるからだ。
そうした中で「みやげ離れ」といった現象をみると、原因の一端はみやげ品を販売する店側にもあるようだ。いわゆる「レール物」といった〈どこにでもある商品〉の氾濫が、「買いたい」と思わせる欲求を阻害していった。
みやげ販売店には、3つの要素が必要だといわれている。第1の基本的な部分が「商品供給」であり、その土地ならではの物産を販売すること。商品群としては、民工芸品、宝飾・装飾品、食品類(海産物・漬物類・酒類・菓子類)などが主流で、店舗形態は専門店化と百貨店化がある。
第2は、ツアー中の中継地点としての機能がある。業界では「トイレ休憩」といった言葉があるように、欠かすことのできな施設であると同時に、交通や気象をはじめ現地情報の発信基地としても位置づけられている。
そして第3は、「旅の演出」ともいえる感動を与える機能だ。観光旅行は、日常を離れた行動であり、いい古された言葉ではあるが「非日常(脱日常)」であることに違いない。みやげ販売店舗には、空間としての華やぎや感動などの要素が求められる。さらに、対面販売でのコミュニケーションも旅行者に「土地」を印象づける大きな要素になっている。最近の傾向としては、この第3の要素が重視されている。
ひるがえって飛騨物産館をみると、商品供給の面では、名称の「飛騨」に象徴される特産品が豊富に品揃えされている。宿泊客とツアー中の休憩客のどちらにのニーズにも対応できる百貨店だ。情報発信機能は、旅館業で培われたものが応用できる。そして、街並みを模した店舗内は、イベント性に富んでおり、非日常の感動を与えている。
いわば、みやげ販売店に求められる3つの要素をすべて具備しているわけだ。
以上は、私が飛騨物産館で抱いた第一印象といえる。幹部から聞いた話では、昨年3月のリニューアルオープンへ向けて、社長の新谷尚樹が精力的に指揮をとったという。街道沿いのドライブインに比べると、空間演出などにみられるエンターテイメント性は〈さすが〉と頷ける。
そうした施設での運営変更は、コスト削減が主目的ではなく、シフト運営によってお客様の動きと連動する要員配置を確立することにある。販売機会を確実に捉えるには、これが欠かせない。また、長期的な視座のもとでのパートの適正な雇用も、ここでは大きな課題の1つとしてあげられる。
さらに、宿泊部門との徹底した連携を図る上でも、高山グリーンホテル本体と足並みを揃えた運営形態が求められるのは、当然の帰結でもあった。
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