飛騨高山といえば、春と秋の高山まつりをはじめ陣屋朝市、古い町並みほか、人それぞれが思い思いにイメージを膨らませられるほど、多彩な観光資源が随所に散りばめられている。さしずめ山好きの私が思い描くのは、北アルプスの山々だ。観光ガイドブック的にいうならば、東はアルピニストの憧れともいえる槍ヶ岳を筆頭に、乗鞍岳、焼岳、穂高岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、南東に御岳、北西に白山が遠望できる。街中を散策しながら、目を転じると山岳や川、自然環境も存分に堪能できる。
そうした飛騨高山に立地する高山グリーンホテルを訪ねた時、地域内オプションツアーの充実による独自の商品企画が、もっと前面に出てもいいのではないかとの思いに駆られる。それだけではない。構造改革による旅館個々の経営刷新と共に、地域そのものをそうした手法で合理的な運用のきる形に整備し、地域一体となった集客手法としてアライアンスを組むことも、私が提唱し続けていることがらの1つだ。
それはさておき、ここ高山グリーンホテルの営業活動でも、地域の観光素材を生かした独自の商品企画が展開されている。老人会向けの滞在型企画をはじめ市内のお寺(観音)巡りなどの商品企画で、新規需要の開拓に取組んでいる。だが、素材に恵まれているだけに、現状の取り組みだけでは十分とはいえない。最近、海外からも注目されている言葉で表現するならば〈もったいない〉ということになる。
なぜ、そうした状況になるのか。答えは、そうした営業分野の業務遂行にも、目に見えないムリ・ムラ・ムダが潜んでいるからだ。営業系のコンサルといえば、一般には営業手法や対人的な心得などに終始するきらいがある。いわば営業マン個々のセンスやマインド、会話テクニックといった個人技の世界を重視する傾向があった。いわば、お客様に対する営業マンの「顔がモノをいう」という認識が、当然のごとくまかり通ってきた。
もちろん、顧客を定期的に回るルートセールスをはじめ、旧来の手法をすべて否定するものではない。だが、そうした営業手法と最近顕著になっているワン・ツー・ワンマーケットとの混同は許されない。個別のお客様にそれぞれ最適な商品企画を提供することは、他社との差別化で欠かせない。そのためには、顔だけの営業ではなく、営業マンが自館の特性を明確に把握するとともに地域の観光魅力などを熟知し、それらを総合的な形でプレゼンテーションに望むことが要点として極めて大きい。
そうした核心段階になると、必ず現場から出る言葉がある。「とてもではないが、忙しくて時間がない」と。だが、本当に時間がないのだろうか。自らの業務内容を解析したとき、そこにムリ・ムラ・ムダがないといい切れる営業マンが、果たしてどれだけいるだろうか。そこに問題がある。
営業のベテランは「段取り7分」という喩えをしばしば使う。確かに、実際の行動の前に綿密なプランを立て、適切な資料を揃えることは欠かせない。といって、それが全てではない。本来の役割は、お客様を獲得することだ。その業務に専念するには、やはり、段取りなどで分担できる作業は業務区分を行い、あるいはコンピュータで管理できる単純作業まで「段取り」の一語で括ることまで認めるわけにはいかない。
今回の運営変更は、第1期の積み残しともいえる4部門が対象となっている。その1つである営業部門については、そうした認識が欠かせない。営業コンサルと構造改革の違いが、そこにある。
|