「旅館再創業」 その54
狙いはサービス品質向上
Press release
  2005.08.13/観光経済新聞

 高山グリーンホテルでの構造改革による第二期運営変更では、4部門が対照になっている。取締役管理本部長の内木真一はいった。
「構造改革によるコストの削減効果は認めるが、今回の狙いはサービス品質の向上にある。お客さまの満足が高まってこそ、ホテルの真価が発揮できる」
確かに、構造改革を進める旅館の多くは、当面の利益確保のためにコスト削減効果に注目する。だが、健全な経営水準を維持している施設では、旅館本来の目的である「お客さまの満足を図る」といった視座を重視する。
私は、内木真一の言葉から数日前の会議を思い起こした。その会議は、旅館の空室販売をいかに推進するかがメインテーマだった。議論が続出する中で、「売り方も大事だが、売り物の魅力が伴わなければ長続きしない」という話が出た。要は、消費者に目を向けさせる魅力の度合いが肝心であり、売り方のテクニックと魅力の内容が整合しなければ無理が生じる。
しかし、「商品力としての魅力を高めるには、現在あるもので当面の利益を確保しなければ、魅力づくりの再投資もできない」というのも一方の現実だ。こうした議論は、何度繰り返しても先へは進まない。私は現実重視で議論にピリオドを打った。
そうした意味では、コスト削減よりも品質重視を前面に据えた今回の運営変更が、内木真一のいう「ホテルの真価発揮」につながることは間違いない。
構造改革による運営変更は、それ自体が品質の向上と維持に役立つが、さらに進化させようとすれば、作業のムリ・ムラ・ムダを排除することで得られるコスト削減効果を、品質のさらなる向上に再投資することで完成度が一層高まる。
私は、数日前の議論を頭から追い払い、再び会議資料に目を移した。その中の1枚の余白に「全社効率」とメモ書きがある。モノの動きと人の動きが定まらなければ、情報伝達もうまくいかない。情報がうまく流れなければ、お客さまの動きに合わせた人員配置も、本来の目的を達成できないことになる。
そうした中でカギの1つになるのがフロントだ。私は、第1期の運営変更で訪れるたびに、フロント人員の定数が気になっていた。業務内容を正確に解析し、整理統合や切り離しの必要性を感じていたといってもいい。そうした運営変更を想定したとき、フロントのカウンター業務における「中抜け勤務」がある。
現在のフロント業務の基本は、大別するとカウンター内の業務、バックオフィスである事務方の仕事、そして送迎などの直截的なサービスの仕事といった3つに区分けできる。
どれが最優先というわけにはいかないが、少なくともカウンターでの「中抜け勤務」による効率化の必要性がある。同時に社長の新谷尚樹が、それを企図しているようだった。ここは一番、現場には怨まれるかもしれないが、そこメスを入れる腹をくくっていた。
それを実現できれば、フロントの業務体系は大きく変る。サービス品質は、さらに高いものになるはずだ。

(つづく)

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