高山グリーンホテルでの構造改革は、5月から第2期の運営変更に着手した。この第2期では、フロント・予約・販売促進(営業)・物産館(売店)の4部門が対象になっている。
6月の指導会議は、対象各部に委ねた業務調査の結果を集約して、次のステップに移ることを主眼としていた。だが、結果は構造改革に必要な調査としては、十分なデータを得るに至らなかった。専門の調査員が行っても相応に難しさはある。多少の微調整が残ったとしても、それは許容範囲だと見込んでいた。
だが、私のそうした思惑は外れた。各部署での業務解析は、次の会議までの持ち越し課題にならざるを得なかった。それが、今日の会議だった。
早朝の福岡空港から中部国際空港・セントレアを経てJR高山駅には、午後1時過ぎに到着した。7月の晴れた高山は、ことさら暑く感じる。九州よりも北上しているとの思いがそう感じさせるのかもしれない。
午後1時半。到着してすぐさま全体会議が待っていた。かなりの強行軍だが、全体会議後のシフト管理者会議と部門別会議、そして翌朝も午前8時から3つの部門別会議をこなさなければならない。会議の連続は決して楽でない。だが、こうした会議のすべてに出席し、現状把握と指示を下す社長の新谷尚樹の姿勢にも頭が下がる。多忙な時間を工面して会議のカナメを担っているのだ。
余談だが、ISOを成功させる秘訣のひとつに、経営者のトップダウンによる指導性があげられる。いわば「やり遂げる」との経営者の思いの度合いが成否のカギを握っている。構造改革にも同様の経営者像が求められる。
話を戻そう。一般的な構造改革の手法は、業務内容の「調査」から始まり、それを解析して「方向性」を見出し、それらを踏まえて「システム設計」を行う。導入する施設で従業員が本格的にかかわるのは、設計されたシステムを現場に示しながら運営変更を推進する段階からといっていい。
ところが高山グリーンホテルでの第2期は、該当部署のスタッフが当初の調査段階からかかわっている。そうなると、こうした会議の連続を避けては通れない。全体のコンセンサスを得るというよりも、部門を越えて問題意識を共有することが欠かせないからだ。例えば、全社的な視点でものごとを捉えるためのアイドリングのようなものであり、本格走行にはこの段階が重要な意味をもつ。
会議で提出された各部署からの資料は、6月時点に比べると深耕されている。あとは、強引さは多少あっても、運営変更へ漕ぎ付くための方向性を打ち出さなければならない。これは私の仕事だ。なにしろ、一定の成果を出すためのタイムリミットが近づいている。そうでないと、その期日を8月末に据えた当初の計画に狂いが生じてしまう。
このあたりのスケジュールと現場の意識の刷り合わせが難しい。ここ高山グリーンホテルの従業員意識は、普通の旅館・ホテルよりも高い。それでも、言葉や素振りの端々から、構造改革を「やらされている」という意識が散見できる。従来の組織論にしばられて、全社効率とは別の観点が表面に表れようとするのだ。それを克服するには、会議を繰り返すなかで意識改革を進めるのが、現時点の上策といえる。
会議の席上でこの「全社効率」の言葉を口にする幹部がいた。私は、会議で説明を続ける一方で、頭の片隅にその言葉がまとわりついていた。
そう、今回の第2期運営変更では、テーマとして「アンケート評価点のアップ」が課せられていた。お客さまの満足を高めることと効率化は、決して相反するものではない。効率化や合理化は、とかくサービスの軽減に短絡しがちだが、これはまったく逆だ。効率化が進めば、余力をサービスの向上につぎ込むことができる。そうした意味でその幹部が「全社効率」という言葉を使っているのならば、これは期待ができる。
その思いが、私の期待だおれでなければ素晴らしいことなのだが……そんな感慨が、会議中の私の脳裏で膨張していた。
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