「旅館再創業」 その31
半年間経過で成果を検証F
Press release
  2005.02.19/観光経済新聞

 旅館とホテルの両方のよさを兼ね備えた高山グリーンホテルの構造改革では、「クロス・オペレーション」がキーワードの1つであり、なかでも宴会部と食堂部のクロスが、大きなカギを握っていた。視点を換えれば、両セクションをクロスさせて発想しなければ、多様な客層に対応した効率的な経営が難しいということでもある。
例えば、食事の形態が入り組んでいる。朝は宿泊客全員の朝食、昼は宿泊客とは別の客層を対象に営業しており、夜は地元宴会客などの一般外来客と、宿泊客の夕食のチョイス制への対応など、多角的に取組んでいるわけだ。さらに、宿泊客については、団体の多い日と小間客が多い日では、利用される宴会場とレストランの稼動が大きく異なってくる。
そこで注視しなければならないのがレストラン(食堂部)の運営オペレーションということになる(宴会部の運営変更は前号で概容を記したとおり)。
食堂部のオペレーションそのものにメスを入れる必要があった。例えば、レストランの開店が11時だとすると、9時ごろ勤務について、業務の最終的な終了時間が夜の10〜11時にかかるケースも少なくなかった。仕組みとしてみると、当然ながら残業をする勤務形態になる。
そこで、この残業を前提にした体制を改善するために、開店へ向けた清掃や昼間の営業が終わって夜間の営業へ移るためのリセットなどを、館内運営の部署に移行させた。そうすることで、1日に10時間以上にもなっていた就業時間が、7時間ていどの勤務時間になり、残業代も発生しない形になる。また、従来は開店時間の前からポジションに着き、開店直後でお客様がいないにもかかわらず、所属するスタッフ全員で客待ちをする形をとっていた。当然ながらそこにもムダが生じている。そこで、ピーク時を基準にした要員配置のきめ細かな体制づくりの必要性を、当初から感じていたわけだ。
取締役の大森守は、いった。「食堂に関して大きく変わってきたのは、定数を確保しておこうという考えが変わってきて、少人数であってもいいサービスをしてもらおうという気持ちが、店長クラスに行き渡ってきている」と。
要は、固定人数を落としても現場は対応できることが、ここで証明された。大森は「数年かけてなかなかできなかったことが、この半年間で大きく手掛けることができ、成果として現れてきた」と評した。
また、レストランは昼・夜の営業で成り立っているが、昼と夜を比べると夜のお客様が極端に多いなど稼動に大きな波動がある。加えて朝は別の動きになる。朝食についてみると、従来は団体が宴会食、小間は一部がバイキングというオペレーションを敷いていた。というよりは、それしかできなかったというのが実態だった。
それを今回の構造改革では、団体を含めてすべての朝食をレストランで行うことに方向転換をした。もっとも、これを実現させるには、高度なオペレーションによるサポート体制が必要だった。ただ、一方でそうした体制へ一気に移行できない事情もあった。例えば、スチュワードの力量もその一因だった。それを可能にしたのは、構造改革による社員意識の変革と、クロス・オペレーションの発想だったといえる。
話しは若干前後するが、そうした事情もあって、実際にはステップ・バイ・ステップで取組んできた。このため食堂部に関しては、あまり大きな変更を性急に行えなかった。宴会部は、バックヤードの仕事を少なくした。10人ほどいたオールラウンドを「全員がオールラウンド」といった意識への変革を求めながら、夜の8時間ぐらいだった勤務時間を、一気に5時間ぐらいに短縮し、その余力を朝のレストランに補給することで、レストラン運営の体制を敷く手段を講じた。人員の交差ができないと、こうした対応できない。そこにクロス発想があった。
これらによって、当初から掲げていた大きなテーマの宴会部と食堂部の一体運営が、いま「宴会サービス部」の形になった。 続く
(企画設計・松本正憲=文中敬称略)


(つづく)

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