「旅館再創業」 その30
半年間経過で成果を検証E
Press release
  2005.02.12/観光経済新聞

 構造改革を推進するときに、基本的に改革しなければならない共通項がある一方で、実際のシステム設計ではケース・バイ・ケースの取り組み方が求められる。そうした中で、ここ高山グリーンホテルのケースは、従来と異なる面が多々あった。それが、特異な経営形態に起因する。
社長の新谷尚樹から、最初の時点でいわれたことを、しばしば思い起こす。それは、「旅館でもなければホテルでもない。その両方のよさを同時に兼ね備えている。宿泊客だけでなく地元宴会に対応し、しかも宿泊客の夕食ではチョイス制も導入している」という点だ。このことは、私が旅館の構造改革で成果をあげてきたといっても、ここでそれが通じるかどうか、暗に「難しい」といわれているのに等しかった。
そうした中で進めてきた構造改革は、半年で約7千万円のコスト削減やサービス評価の向上などで相応の成果をあげてきた。だが、これまでの取り組みは、いわば、構造改革に必要なパーツをつくってきたともいえる段階だ。肝心なことは、それらが相互にクロスしながら相乗効果が発揮されなければならない。これは、旅館の業務が各部署で独立して完結するのではなく、一連の流れとしてお客様に評価されることを考えれば当然だ。どんなに美味い料理をつくっても、提供の段階でつまずけば本来の評価は得られない。一事が万事、そうした連携のもとにある。接客の最前線と後方支援の連携でもある。
このことから、サービスコストを削減すれば、一方でサービス品質が下がり、結果として満足度が低下する悪循環ループに陥ると一般的にはいわれてきた。だが、それでは何の意味もないし、それをきたさない再生・活性化が構造改革の本旨でもある。
その意味で、ここ高山グリーンホテルの構造改革では、キーワードの1つともいえるのが「クロス・オペレーション」だった。その中で、大きな取組みといえるのが、食堂部と宴会部の「クロス」だ。結論からいえば、単に両セクションの業務をクロスさせるコラボレーションではなく、2つのセクションが「宴会サービス部」の名称の下で一本化されることに本来の意義がある。
背景には、旅館でありホテルでもある経営形態への対応があった。例えば、館内28カ所の宴会場は、前々日まで予約ブッキングに対応するなど、いわばタイトで緻密な営業をかけている。結果として、連日連夜の「会場どんでん」を繰り返す高稼動率を誇っているわけだが、それゆえに1つひとつの作業内容を見直し、接待の最前線とバックヤードとの連携を再構築することが第一の課題でもあった。いい換えれば、食堂部と宴会部のクロス・オペレーションの前段は、パーツとしての両セクションの業務見直しだった。
宴会場の作業は「備品セッティング」「料理セッティング」「宴会」「片付け」「(次ぎへ向けた)膳立て」といった流れに分解できる。このうち今回の運営変更では、「備品準備」「汁取り」「膳立て」の業務をバックヤードに移管した。接待係の業務は「料理セッティング」から「宴会」「片付け」となったわけだ。これによって、接待係が接待に専念する体制が確立され、サービスアンケートの向上をはじめ、さまざまな面で効果をあげてきた。
だが、これで課題を克服したわけではないし、ましてクロス・オペレーションが実現したのでもない。レストラン営業とのクロスを実現させなければ、多様な顔をもつ高山グリーンホテルの経営実態とマッチしない。
  
(企画設計・松本正憲=文中敬称略)

(つづく)

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