「旅館再創業」 その29
半年間経過で成果を検証D
Press release
  2005.01.29/観光経済新聞

 いま、多くの旅館・ホテルの厨房は、厨房のペースに応じて作業が組み立てられている。例えば、食器洗浄にしても大半は夜間に行われている。理由は、簡単だ。一般的な厨房のリズムをみると、朝食の準備を始めて仕上がった後、7時ぐらいから時間が空いてしまう。その空き時間に今夜の何品かを仕込むためには、前夜のうちに食器を洗っておく必要がある。「朝の空き時間をムダにしない」といえば、「なるほど」と頷いてしまう経営者が多いものの、合理的な人件費という点で肝心な一点を見落としている。
「朝の空き時間をムダにしない」というが実態は、その後がない。一旦は厨房を離れて午後3時ぐらいから再び厨房に戻り夜の作業に入る。つまり、昼間に生じる「空白の時間」を容認しているのだ。これは、「厨房の都合」に振り回されている形態だと私は考えている。
ここ高山グリーンホテルでも従来は、夜間に食器を洗っていた。ところが今回の運営変更は、各部署単位ではなく全社的は視点が第一に優先されなければならない。いわば、厨房という1セクションの都合を優先しては成り立たなくなる。
私の提唱する構造改革での厨房業務は、喩えれば「目に見えないベルトコンベア」といえる。食器準備をして時間ごとに盛付けていく作業にしても、実は食器洗浄と連動して考えられるのだが、この点が往々にして見落とされている。というよりも、「連動する」という発想そのものが欠落している。
例えば構造改革では、夕食の場合に午前11時から厨房作業に入り、夕方の5時ぐらいには大半が完了しているような集中的なタイムスケジュールに運営を変更する。そこでは、従来の「夜間洗浄」をしてはならない。タイムテーブルを具体的にいえば、午前9時から前夜の食器を洗い始めたあとで乾燥と冷却時間を加味すると、11時ごろから夜の盛付作業に入ることができる。つまり、LOCSによって可能になった食器準備をはじめ、厨房で必要な「地方大会レベル」の作業も、パートの集めやすい昼間に集中させることができるわけだ。
この点を作業動線の上からみると、洗浄して乾燥させた食器を、そのまま次ぎの盛付へ向けた準備に移す。これが「目に見えないベルトコンベア」であり、そうすることで一旦は収納する作業と、次ぎの準備のために改めて取出す作業がなくなる。人手もスペースも軽減され、作業環境の効率化は一目瞭然だ。ただし、ベルトコンベアは、その場面だけでは成り立たない。食器の洗浄も盛付準備の順番に行われなければ、本当の意味で効果は得られない。これは、勘ではできない。トータル的にシステム化されて初めて実現するするものだ。
ただし、従来に厨房に対して昼間の空白時間である「中抜け」の排除を指示しても、他の部署のように簡単には受け入れられない。なぜなら、他の部署に比べると厨房の生産性は圧倒的に高いからだ。したがって料理長の理解がカギを握っており、高山グリーンホテルでは、それもなんとかクリアできた。   
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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