「旅館再創業」 その26
半年間経過で成果を検証A
Press release
  2004.12.11/観光経済新聞

 私は、ここ高山グリーンホテルを初めて訪ねたとき、社長の新谷尚樹からいわれた。「私は結果の数字ですべてを評価する」と。厳しい言い方ではあるが、そうした考えを突きつけられたことが、むしろ爽快だった。「ならば、いい成果を出しましょう」私の闘争心に火がついた。いま思えば、私の性格が見抜かれて逆手を取られたのかも知れない。それならば、小気味のいいほど〈してやられた〉のだ。これも痛快だ。
半年間の成果は、新谷流の表癌を借りれば、「社内アンケートが前年上期85点。それが今年上期は87点で2点アップした」「9月までの中間決算で人件費がホテル全体として7千7百万円の削減をみた。子会社へ振り替え部分の7百万円ほどとプラマイすると、7千万円のコスト削減が現実に図られた」と、いずれも数値データが証明している。これはまぎれもない事実だった。
これらの中で社内アンケートの点数アップには、幾つかの施策がかわっている。私がしばしば喩にあげる旅館経営での「3つのスター」(接客・厨房・バックオペレーション)のうち、接客にあたるスターが玄関口で送迎サービスを行える体制に運営変更をした。当然といえば当然のことなのだが、多くの旅館ではこの接客係がバック部門の業務に追われて、本来の接客サービスを手薄にしている。はなはだしい場合は手持ち無沙汰で暇を持て余しているケースさえ少なからずある。これでは、人件費ばかりがかさんで肝心のサービスを充実させることができない。
また、直接的な接客ではなく、料理部門での質的向上もアンケートなど全体としての評価アップにつなかっている。施策としては厨房の思い切った統廃合を実施した。調理部門の運営変更は、構造改革を推進するうえで大きなファクターであり、難しい分野ではあるが、逆に効果が歴然とみえる分野でもある。和洋中厨房の統合によって朝食バイキングの内容が、一段とグレードアップした。
もちろん、接客のスターが本来の業務に専心できるための施策などが、相互に作用しあった結果であり、ある種のシナジー効果ともいえる。そこへ至るプロセスは平板ではなかったはずだ。当初、「従来の業務だけでも忙しかったのに」あるいは「業務が増えてきつくなった」などの不満があったことは、私も承知していた。与えられた仕事だけを何とかこなしていた従前に比べると、一人ひとりに課せられた役割が増えたのは確かだ。その代わり、それをこなせる運営システムも構築した。
そして、従来のパターンがそうであったように「仕事は慣れ」なのだ。慣れることにより不満の多くは根拠のないものと気づく。その気づきは、同時に「仕事への目覚め」に発展する。意識改革の第一歩がそこから始まる。それは、構造改革に着手した当初にみられた「なぜ、慣れた方法を変えなければならないの」という表情が消えたことと表裏の関係にある。いま、表立った不満の色は薄らいだ。それが本音でも消えるには、構造改革の「蚊帳の外」をなくすことにほかならない。楽しみな展開となってきた。  
(企画設計・松本正憲=文中敬称略)

(つづく)

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