新 旅館が変わる赤字が消える その40
旧来の経営手法改革に大ナタ
Press release
  2004.05.29/観光経済新聞

【チャートの概括】 診断グラフの回答(点線)で「利益の確保」と「人事施策」の両項目が実勢(実線)と低いレベルでリンクしている。ただし、回答では「利益の確保」ができない諦観が支配的なのに対して、筆者が示した実勢は、泥縄的な安売りに終始するだけで「打つべき手」を講じていない実態を示したもので、チャート上交点の意味あいは異なる。同様に「人事施策」も、回答が旧来の経営手法に拘泥して行なえずにいるのに対して、実勢は人事施策そのものに対する改革意識の低さである。これら2項目を含めて早急な見直しが不可欠だ。
【課題総括】 「人件費の適正化」では、「人件費がかかり過ぎて…」という前に、金額ベースだけではなく人件費の必然性(運営)に対する見直しが急務。客数レベルにみあった適正な作業人員の算出・出勤計画など客数連動の運営体制構築が急務だ。また、ミクロ解析を踏まえたシフト運営で全社的・多機能的な人員運用を図り、人件費低減の低減とともに作業の「ムリ・ムダ・ムラ」を解消することも欠かせない。「利益の確保」では実績収益の状況確認が大雑把なことが第一にあげられる。売上高をみるだけで経営解析を行っていないケースが多い。予算未達であれば「特割」をはじめとした各種の施策を講じ、細かな財務解析やキャッシュフロー対応などの最終的な微調整行が不可欠。また、対外的な施策と同時に各事業部門を独立会社のようにみなした社内カンパニー制度は、経営リソース(ヒト、モノ、カネ)を各カンパニーに配分、同時に権限を大幅に委譲するなどして、独立採算を徹底するものであり、売上げに連動した利益確保のストラクチャーとして早急に取組むことが望まれる。社内の仕組みとしては「人事施策」や「パート化施策」などへの対応も急がれるところ。適正な人事考課は、社員のモチベーションを高め経営を活性化せる意味合いで不可欠である。ただし、頭数ではない人事計画(労働生産性の見極め)であること。社員・パートの比率は、業務の難易度を踏まえて対応領域を明確化することが先決。「原価計画」では、自館のグレード・提供するサービス品質を踏まえて、従来の流れを見直すことが肝心。「運営体質」では、一定の人件費で経営可能な企業体質への変革が大前提であり、「経営が苦しい→給与を下げる→社員をパート化する」といった図式を改め、どのような状況下でも「営業利益15%以上の利益ストラクチャー構築」が不可欠。それには一般販売管理費の最大級発生科目である人件費管理にメスを入れなければならない。以上の各項目については、具体的な展開は個々に異なり一概にいえないが、それらを踏まえた成功例を次回からの新シリーズで紹介する。(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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