新 旅館が変わる赤字が消える その39
売上アップへ向け全社再検討

Press release
  2004.05.22/観光経済新聞

【チャートの概括】 構造改革を目指す品質目標としてチェックポイントの紹介(14年度)と実際の自己診断解析(15年度)を行ってきた。今回と次回は、自己診断結果の総括を行う。診断グラフの回答(点線)をみる限り、経営理念や売上アップへの施策、クレーム防止などについては、相応に問題意識をもっている。しかし、筆者が実際に行った業務診断時の調査による実勢(実線)は、経営者の回答結果とリンクするものではなかった。結果としてサービス理念を含む各項目での再検討が必要であり、それを売上アップ施策に連動させる必要性を物語っている。
【課題総括】 「売上アップへの施策」では、年間販売目標を達成するための根拠となる数字をもつことと同時に、経営ストラクチャーを考える上では「計画的リニューアル+営業利益の確保」が前提条件となる。また、値引きによる割安感の訴求では具体的に納得させる展開が欠かせない。さらに宴会などでは「最初の30分間」の重要性を実際の運用面へ十分に反映させること。人員減・単価減・付帯売上の「減」について内容把握・解析を十分に行い、攻め方(販売)を適正に見定める。社内の固定費削減では「全体のコスト見直し」といった捉え方が希薄な点などが指摘できる。「サービス理念」では、「はじめに組織図ありき」といった運営手法の早急な是正が第一。「危機管理」では、法規制への対応や保険への加入など必要最低限のことだけでなく、未然に防ぐ危機管理意識の醸成が欠かせない。「業務内容の見直し」では、管理マニュアルの整備が急がれるところだ。年功序列的な経験要素が作用し、作業手順などは「頭の中に入っている」といった認識がマニュアル整備を遅滞させている。これは、業務意識(サービス品質)の低下を招くだけでなく、給与にみあった生産性が得られず人件費のムダをも生み出している。また、一連の流れの下で他部門との関連性を捉える視点が欠落しているために「リレーション」に対する発想が欠如し、そこにもムダが発生している。「クレーム防止」では、「お客様のニーズの変化」といった言葉が多用される半面、それに応じてマニュアルを「見直し続けている」という言葉が聞かれない。変化している現実に対して、対応を変えていかなければクレームの発生は当然ありえる。単に高質であればいいわけではなく、自館の品質方針に合致した形のものが、標準的な作業として常に一定のレベルで提供されることが前提である。不幸にして発生してしまったクレームは、どのように「上手く処理したか」だけでなく、なぜ発生したのか「発生のメカニズム」を把握して未然に防ぐことが肝心。そうした意識や仕組みの確立が基本的な課題として指摘できる。(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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