【チャートの概括】 診断グラフに掲げた5項目の設問に対して、多くの経営者は「意識している」との認識を示しているが、実勢として仔細に検討すると現れる図形は一回りも二回りも小さいものになってしまった。いわば、「何もできていない」といった運営体質に陥っている。これは、シビアな経営環境だけに起因するものではなく、むしろ経営者の体質を垣間見せる結果になっているともいえる。経営者、そして社員を含むすべてに意識改革が必要なことを診断チャートは示している。
【基本課題】 回答結果から導き出される基本課題は、「意識している」が「何もできていない」ことの意味を把握し、その改善を図ることである。結論からいえば、経営側と社員の間に生じている「デキレース感覚」を払拭することである。例えば、経営者は売上目標の達成やクレーム「0(ゼロ)」などを唱えるが、本音は「難しい」と思っている。だが、それが建前であっても唱えないわけにはいかない。一方の社員は、経営者のいうことが現実に照らしたときに「難しい」とわかっていても、頷くしか方法がない。問題点や課題の克服を先送りし、とりあえずその場をすます「デキレース」が生じてくる。これへの抜本的な解決が基本課題の出発点となる。
【改善目標】 企業の目標である利益の確保は、単に消しゴムを使った数字合わせからは生じない。まず、「人事評価制度の採用」(株主配当・内部貯蓄・投資・社員還元の4ファクターにおける比率の明確な設定と規定どおりの対処)へ向けた分析が第一歩である。これにより「人事考課ファクターの採用」(社員への利益還元では個々の努力と成果に見合った差別化で会社への求心力も高める効果)が具体化できる。また、それを補強するには利益をメイクした指揮官と指示に従って努力をした社員を差別化して評価する「社員グレード別支給」(社員のグレードを勘案した支給制度を賞与制度に組み込む)が必要となる。こうした施策の実行が改善への第一段階である。これを踏まえた第二段階は、本シリーズですでに紹介した「社内カンパニー制度」の導入などである。そのためには、ここでの回答率は低かったが「収支数値の情報公開」(社員還元の基本となる日別・週別・月別の経営状況の公開)が欠かせない。これは、視点を換えれば、経営状況にみあった危機意識を醸成させ、利益の創出にもつながってくる。また、「出勤日の繁忙連動評価」(出勤簿の日数だけでなく繁忙日の業務精励など、利益貢献度を評価する仕組み)もこうした施策にインクルーズされる。要は、デフレで客単価の上がらない状況下で、仮に売上が10%下がっても一定の営業利益を確保する利益ストラクチャーの整備が急務である。(企画設計・松本正憲)
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