新 旅館が変わる赤字が消える その35
「大票田の原価対策」を講じよ
Press release
  2004.04.17/観光経済新聞

【チャートの概括】 施設管理原価と人件費原価にスポットをあてたのが今回の設問。結果は、チャートが示すように極めてバランスを欠いたものだった。見方によっては、一般的な経営者の認識ないし関心度を物語るもので、改善の余地を多分に含んでいる。まず、一般的な認識の点では、「電気をこまめに消せ」「水をムダに使うな」といったフレーズに代表される表層的な部分への注意は払われているが、そこで留まっているということ。また、ローコスト経営へ向けた改善点としては、筆者が提唱している「ネットワークビジネス」の視点が、ほとんど見落とされていること。その実態を診断グラフは物語っている。
【表層的課題】 診断グラフが示すように設問の「光熱費契約と運営」「水道原価対策」に関しては相応に取組んでいる。実際に年商10億円に対して、年間で50万円、100万円といったコスト対策を行っているが、これではローコスト経営の目的を果たしていると評価できない。コスト効果の面では「やらないよりマシ」の域さえ疑問視される。問題点は、いつ発生するかわからない施設トラブルに対して保守要員を雇用していることにある。施設管理の上で「常識」と思い込んでいる事柄ではあるが、そうした雇用が経営を圧迫しているのも事実。そこにメスを入れることが不可欠であり、ネットワークビジネスの必要性が生じている。
【基本的課題】 設問の「保守契約の共有化」「保守人員の共有化」「事務部門のアウトソーシング」がネットワークビジネスに相当する部分である。旅館側のメリットは、@固定費をかけずに必要なだけ活用できるA最高のスキルを利用できる――といった点が特に注目できる。当然ながら、それを受ける業者側は、各分野で仕事の目的を達成するためにそれぞれ専門特化した人員や設備を抱えており、旅館側とネットワーク化されることで固定収入が確保できる。いわば、双方にメリットが生じるビジネス形態である。こうした発想の欠如を診断グラフは示しており、早急な対応が求められている。
【発展的課題】 上記の基本的課題の解決は、「人件費配分表の制定」(人件費の総枠を売上の増減に照らして維持できる配分表)、「売上可変人件費運用」(売上高に連動した可変人件費の仕組み)へとつながる。これは「雇用形態の見直し」へ発展させるカギでもある。現状では、1日7〜8時間雇用のパートに社会保険がない、社員・準幹部などに残業手当がないなどが往々にしてまかり通っている。労働集約型産業である旅館・ホテル経営の「王道」を進むには、現状の労働環境を改善することが欠かせない。裁量労働給与制度や社内請負社員契約など、発展的課題への対応が勝組への条件の一つである。
(企画設計・松本正憲)




(つづく)

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