【チャートの概括】 料理原材料原価は、自館のグレード・提供するサービス品質と大きくかかわることから、コストコントロールを行う上で難しい科目でもあり、現状では十分な対処がなされていない。いい換えれば、改善しだいではローコストに大きく貢献する。設問に対する回答は、グラフが示すように、極端にバランスを欠いた形になっている。そこで、本題の前に次の事柄を指摘しておきたい。「原価管理と業務管理を同時にこなすスペシャリストが本来の料理長である」ということ。それができないと料理のスペシャリストではない人間が、マネジメントの立場から料理長を部下にする形になる。料理長にとって屈辱としかいえないはずだが、現実にはそうした形になっているケースも少なくない。それ以上に、経営者が料理長に対してそうした意識を求めず、従来型の「厨房概念」を脱却していない場合は、料理に関する原価管理と厨房の業務管理においてハイコスト(高値安定)を解消できないことになる。診断グラフは、そうした現実を歴然と示している。
【基本課題】 設問に掲げた6項目のうち「原材料保管の見直し」を除く各項目は密接な相関関係のもとにある。一般的な厨房の現状に照らしながら相関性を考えてみよう。診断グラフが示すように「レシピ原価」と「入札制度」は、相応に実施されている。しかし、そこまでである。極論すれば「原価に関心を払い、購入価格対策も適正に行っている」との思い込みが基本的な課題といえる。例えば次のケースである。当日夕食の食材に不足が生じ、あわてて注文するケースは日常的に珍しくない。そうしたイレギュラーな発注には、納入業者も配達コストをはじめ相応の価格設定で対処してくる。これでは「入札制度」があっても効果は半減する。基本は「メニューのレシピ化」であり、本来の「レシピ原価」もそこからはじき出されなければならない。レシピ化は原価をシミュレーションするだけでなく、作業過程やレベル(地方大会・県大会・伝国大会)などから、関連する人間の労務シミュレーションにもつながる。いわば人件費管理である。そして、計画的な発注も可能となる。また、メニューがレシピ化されていれば、一定期間に必要な食材を一括契約し、納品と支払いを使用状況に応じて行う「蔵仕入方式の採用」も可能となる。
【個別課題】 レシピ化に関連するものとして「原材料保管の見直し」がある。仮に古い食材を使えば、食中毒の危険性も孕んでいる。基本は、原材料・仕込品・盛付食材に分割し、必要な食材を一目瞭然に保持することが食材管理の基本。各セクションに聞かなければ状況を把握できない現状は、まず改善されなければならない。
(企画設計・松本正憲)
|