新 旅館が変わる赤字が消える その31
頭数ではない人事計画の要点
Press release
  2004.03.13/観光経済新聞

【チャートの概括】 社員・パートの比率見直しに焦点をあてた今回の設問に対する回答は、全社レベルで捉えたときにかなり整合を欠いている。グラフが物語る課題を解析する前に、この設問の背景を整理しておきたい。まず、念頭に置かねばならないのは、仕事には地方大会・県大会・全国大会のようなレベルがあり、作業内容の高次化などの差異があることだ。例えば、すべての仕事をオール幹部社員(全国大会)で行えば経営者は「持ち出し」になり、オール社員(県大会)だと1個のメロンを8つに切った1切れを食べたれる程度。さらに可能な限りパート化(地方大会)を推進すれば、メロン1個をまるごと食べられるといった比喩が可能だろう。換言すれば、作業にかかわる運用人件費の効率化を図ることが、現在の経営状況下では不可欠である。これに対して診断グラフは、人件費効率が極めて悪い実態を如実に物語っている。
【基本課題】 社員・パートの比率を考える基本は、業務の難易度を踏まえて社員とパートの領域を明確にすることである。設問の「パート化計画進捗管理」は、ほとんどのケースで計画性に乏しく、進捗管理の意識は皆無に等しい。まず、進捗計画を策定したうえで、実施状況の記録と適正な管理が「メロン1個を丸ごと食べる」方向への要点となる。
【個別課題】 「厨房のパート化」は下洗いぐらいがパート化の主流で、盛り付けなどのパート化は経営者の意識一つで実施しているところと、いないところに分かれる。また、赤字経営で板前の給与が払えずにパート化しているケースもある。いずれにせよ「どの程度(例えば地方大会レベル)までの作業ならパート化する」といった計画性は皆無だが、厨房業務の全体を捉えた人件費施策を講じることが現状改善の第一歩。「後方運営のパート化」は客室整備・食器準備などで進んでいるが、すべてパートが理想。「事務部門のパート化」は、ほとんど手付かずの状態にある。社員の主管業務とパート化できる業務(入力・起票など)の区分を明確にしたうえで、可能な部分からパート化を推進する。「館内販売部門のパート化」は、時間帯による対応(早朝・夜間など)を含めてパート化の進捗は不十分。パート・社内ヘルプなどの体制構築がカギ。「フロントのパート化」も遅れている。昼の暇な時間帯にも社員が多く出勤していることから、定員8人でも夜・朝は3〜4人のケースが多い。10:00〜15:00をパート化できれば、現状の3〜4人を6〜7人出勤にすることが可能だ。「施設管理のパート化」では、高度な専門技術を必要としない電球の交換をはじめ、日常的な館内点検などの保守業務は女性パートでも十分に対応できる。そうした部門のパート化も不可欠である。
(企画設計・松本正憲)



(つづく)

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