【チャートの概括】 適正な人事考課は、社員のモチベーションを高め経営を活性化せる意味合いで不可欠である。ただし、そのためには業績評価と人事考課が連動した社内の仕組みがなければならない。診断グラフは、そうした意味で極めて"お寒い状況"を露呈するものだった。
【基本課題】 仕事には「目的」があり、目的達成のために「手段」がある。ところが、往々にして手段が目的化する。例えば接客での「挨拶」は、お客様を喜ばせるのが目的であり、行為自体は手段である。その挨拶が目的化してしまうと形ばかりにとらわれ、お客様に誠意が伝わらず本来の目的が達成できない。同様に留意すべきは、「WHAT」はあるが「HOW」のない状況である。言い換えれば、運営にかかわるさまざまなシチュエーションで具体性が欠けることから、結局は目的・目標に対する厳しさがなくなっている。設問の一つ「部門業績数値の設定」にしても、グラフが示すように過半の施設で行っているが、その際に会社側は「たぶん達成できないだろう」が前提の精神論に近いものがあり、社員側も「無理だろう」とタカをくくっている。つまり、会社と社員の間で「デキレース化」が生じている。これでは業績評価など無意味であり、業績にみあった人事考課も実現しない。診断グラフは、そうした社内システムの整備が早急に必要なことを如実に示している。
【個別課題】 モチベーションにかかわる事項の一つに「売上利益の社員還元」がある。現状の経営数値を原点「0」とすれば、それを上回る利益にどう対処するかが課題。すべて会社の利益とするのではなく、その利益を社員還元する度量も必要となる。ただし、幹部・社員に対して実際にどの程度の力量なのかを測る「踏み絵」も必要であり、さらに幹部については多少荒療治だが、思い切って経営の一端を担わせ「良く(黒字)も悪く(赤字)も責任を取らせる」といった施策も必要である。そして自己査定、考課委員会の設置、個人面談の実施などがシステム的に整備されていなければならず、そのための人事考課制度マニュアルが必要となる。ここでの留意点は、自己査定では期待と現実とのギャップが「満足・不満」の岐路となること。考課委員会の設置では「考課する部課長に問題あり」が多いこと。会社はヒト・モノ・カネのインフラで経営をこなしているが、その運営において経営者が必要とする力量を有した社員を育成しなければならないことになる。個人面談の実施では「なぜ給与が上がった(下がった)のか」「なぜ職場の異動なのか」の情報を明確にすることが欠かせない。ディスクロジャー(情報公開)の時代である。情報が明確でないと「建前」で仕事をすることになる。
(企画設計・松本正憲)
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