【チャートの概括】 黒字経営を目指した「利益の確保」の4回目として「社内カンパニー制度」を提言し、認識度の把握を試みた。診断チャートに表れた図形は、社内カンパニー制度についての認識が極めて低いことを物語っている。
【基本課題】 この制度は、各事業部門を独立会社(接客サービス会社、厨房会社、フロント会社、営業会社、総務会社…)のようにみなし、経営リソース(ヒト、モノ、カネ)を各カンパニーに配分、同時に権限を大幅に委譲するなどして、独立採算を徹底するものである。このため給与水準や人事制度などもカンパニーごとの裁量が可能で、業務内容や個人のレベルなどを反映させる柔軟な施策が講じられる。例えば売り上げ10億円で営業利益(償却・利払い前)を15%と仮定した場合、最大の経営課題は売り上げが9億円になった場合、営業利益の15%確保が困難で、場合によれば赤字になる。そこで経営者はリストラ等の対策を講じるが、幹部が『親心子知らず』で部門人件費の改善を行わない事が問題になる。そこで、「フロント会社は売り上げの2%で運営、厨房会社は同じく30%で運営(この場合は材料費まで入れる)しなさい」としたうえで、残った利益は部門業績評価を行う仕組みを作れば、人間誰しも自分が最も可愛いわけで、自分の収入が少なくならない努力をする。その結果、安定経営の利益確保と自立可能な幹部育成が両立できる。これがカンパニーとなる。各部門長が社長になり、経営者と同一の視点感性が育つ。つまり、『売り上げに連動した利益確保のストラクチャー』の構築が社内カンパニーである。診断チャートでは、すでに部門別収支の実行や、何らかの財務ソフトを導入している施設があることを示しているが、現時点では社内カンパニーとしての認識に乏しいために、運営計画や予算計画が不十分で実効を得ているとはいい難い。
【個別課題】 例えば接客カンパニーは、客数対接客係数(正社員VSパート)の適正な比率とそれにかかわる人件費などの運用経費を予算化(予算計画)し、計画に対して収支報告を求める。予算未達ならば、残業削減や歩留まり向上などの施策を講じるわけだが、全社レベルでは難しい現場の実情にフィットした是正措置が、カンパニー制のもとでは可能となる。あるいは、各カンパニーの財務分析からキャッシュフロー不足資金の支援予算を確定し、全社的な資金繰りを実施することも可能だ。これらに対応したカンパニー制度の推進には、各カンパニーの的確な自己管理が求められ、適正な業務機器・財務関係のコンピュータソフトウェアなどが必要。プロフィットを前提に計画性のあるリソースの活用も、ここでの課題の一つといえる。
(企画設計・松本正憲)
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