新 旅館が変わる赤字が消える その26
経営は金額であり、人数でない
Press release
  2004.01.17/観光経済新聞

【チャートの概括】 実務編としていえることは、経営は人数ではなく金額であるということ。これに対して現状をみると、もちろん結果は金額でみているのだが、予算段階では人数がベースになっている。診断チャートは、そうした状況を端的に表しているともいえる。いわば実績分析と「先行予約」に対する認識に問題点があるともいえる。
【基本課題】 計画策定の基本的なデータは、これまでの実績に潜んでおり、その実績をいかに詳細に解析するかで結果が左右される。その意味で基本となるのが「年間実績分析」である。この分析は、経営改善のために行うものだが、現状では大きく分けて二つの問題がある。一つ目は、エージェント別や地域別の実績分析を行っている半面、企画別の分析がほとんど行われていないということ。例えば、過去1年間の売上・客数を解析する場合に、商品企画別の実績やエージェント別の実績などに細分化し、それぞれの傾向を把握することが要点となるが、これが不十分である。二つ目は、料理と宿泊費の解析がなされていないこと。結果として不動産業が成立せずに、赤字を増加させている。実績の把握・分析が改めて問われていることを診断チャートは示している。
【個別課題】 上記の料理と宿泊費の解析については、次のことがいえる。例えば、年商10億円で営業利益1,000万円の施設があったとする。年間売上を2割・2億円上乗せできた場合、稼働率も80%にまで上がったが、利益は5,000万円にしかならなかった。これでは先行きが成り立たない。しゃにむに売上(人数ベース)を伸ばしても、利益増にはつながらないということだ。どのような戦略で経営改善を推進するかが明確でなければならない。その決め手となるのが、実績分析である。診断チャートでの問題点は、やはり人数ベースが中心になっていることを意味している。人数と同時に金額をおさえておくこと。それが「財務収益の検証」であり、これをきちんと実施しておかないと、いわゆる「人数あってもカネ足らず」の現象が起きてくる。そのためには、企画別の予算を確認しておかなければならないし、それが企画商品ごとに対応しておくということでもある。同時に予算が未達ならば対策を行う。これに対して現状は、マクロで捉えすぎている。肝心なことは、キャッシュフロー経営の原点を明確に見据えることであり、換言すれば不動産業としての利益を、いかに確保していくかということでもある。予算未達に際しての最終的な微調整として「特割」にしても、上記のような一連の流れを明確に意識し、経営戦略の一角に位置づけられていなければ、単なる安売りにとどまり、特割実施の意味がなくなってくる。
(企画設計・松本正憲)



(つづく)

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