新 旅館が変わる赤字が消える その23
記録やルール化が予防の一歩
Press release
  2003.12.13/観光経済新聞

【チャートの概括】 診断項目として記録、規定、是正措置、マニュアル、勉強会、お詫び状の6項目を掲げた。回答結果のチャートは、左側の2項目だけが相応に実施されている偏りを示している。これは前回述べたように設問のベースがISOであり、PDCAサイクルの「是正措置」といった部分の欠落を如実に示している。換言すれば、従前の運営手法に頼って「クレーム処理だけ」を行っている姿が表れたものであり、クレーム予防の観点が欠如したグラフパターンになっている。
【基本課題】 不幸にして発生してしまったクレームは、どのように「上手く処理したか」だけでなく、なぜ発生したのか「発生のメカニズム」を把握し、未然に防ぐことが肝心。前者の処理ハウツーは、ベテラン社員のノウハウとして重要視されがちだが、基本は後者の「未然に防ぐこと」にある。前者のノウハウを集めたものがクレーム対応マニュアルのように思われがちだが、それは緊急避難的なものであって、本来の危機管理ではない点を念頭に置き、今後のクレーム対応にあたる必要性を物語っている。
【個別課題】 チャートのなかで比較的に高い実施数値を示した勉強会やお詫び状の根底には、是正措置がなければならない。これがないと処理の済んだ時点で問題に終止符がうたれてしまう。したがって第1点は、発生原因と対応状況などクレーム内容のすべてを、記録表の形で仔細に記録すること。この場合、現場で個々に発生するクレームだけでなく、宿泊アンケートなどに記載された不満事項も同等に対処する。第2点の運営規定は、「クレームはできれば隠したい」とする現場の意識を払拭するものである。大事に至らなければ担当者レベルで処理されがちであり、これも同質のクレームを繰り返し発生させる要因になっている。さらに、記録をとり、原因について一定の把握ができたとしても、それに対する是正措置が講じられなければ、再発を防ぐことはできない。そして、第1の項目で示した記録が、この是正措置でも当然「どのように改善したのか」の記録として必要になる。これが第3点。以上の一連の処置をルール化し、規定として明確に示したマニュアルの作成が必要となる。その上で、はじめて処理ノウハウのハウツーも活用が可能となり、勉強会も生きてくる。また、こうした勉強会の教材になるのがルール化された規定(マニュアル類)であり、それによってクレームに対する危機意識も醸成され定着する。つまり、これまでマニュアルと考えてきたものに対して、上記のような観点からの再検証が求められている。その原点にISOによる品質管理の必要性があることを、ここでの診断結果は示している。
(企画設計・松本正憲)


(つづく)

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