新 旅館が変わる赤字が消える その22
クレーム防止打開策にISO
Press release
  2003.12.06/観光経済新聞

【チャートの概括】 ここでの診断は、①クレームの予防②作業内容のチェック③是正(対処)の記録など3つの視点から設問を展開したこのうち今号で示した①②に関するチャートの各項目は、いずれの回答も低い数値にとどまっている(項目③は次号)。これは、設問のベースがISOであったため、やむを得ない結果ともいえる。マニュアルについて現状をみると、接客などの一部についてはまとめられ、冊子化もされているが、実際には「それで終わっている」といった状況にある。つまり、ここで診断しようとした各項目については、ほとんど実施されていないのが実情である。例えば「是正措置」といった言葉自体が存在しないマニュアルが大半を占めている。そこで各項目について改めて意味あいを検証する。
【基本課題】 サービス提供にかかわる諸作業は、自館の品質方針に合致した形のものが、標準的な作業として常に一定のレベルで提供されることが前提である。単に高質であればいいわけではない。それが設問の第1項目にかかげた「作業マニュアルの作成」である。従来、マニュアルと呼ばれていたものが形骸化する原因は、「見直し変更」が適宜なされなかったことにある。各論的にいえば、「お客様のニーズの変化」といった言葉が多用される反面、それに応じてマニュアルを「見直し続けている」という言葉は聞かない。変化している現実に対して、対応を変えていかなければ、クレームの発生は当然ありえる。つまり、見直し変更、何をどう変更したのかの記録といった基本的な仕組みに対する認識がなければ、マニュアルは機能しないということ。ISOの視点が不可欠な第1点がそこにある。
【個別課題】 どんなに完全を期したマニュアルがあっても、それが確実に機能しているか否かのチェックが行われていなければ、絵に描いた餅にすぎない。作業チェック表の作成は多少なりとも行われているが、「チェック記入者の任命」から「運営不備の罰則制度」までの各項目については、極めて曖昧な状況にある。とりわけ複数の人員がかかわる業務などでは、記入者が不明瞭になりがちであり、加えてチェック表の回収方法、確認や改善指導の責任者も明確でない場合が多い。そうした状況下では、改善・クレーム予防へ向けた貴重なデータであるチェックシートのファイリング・保管もなされていない。また、それらを怠っても何ら責任を問われない状況が、診断チャートからは読み取れる。ISOでは「PDCAサイクル」が基本となっている。計画・実行・検証・是正がサイクルとして機能し、次のステップアップへつながっていくISOに着目する必要があり、現状では最善の策といえよう。
(企画設計・松本正憲)



(つづく)

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