新 旅館が変わる赤字が消える その20
1年間変形労働運営が基本に
Press release
  2003.11.15/観光経済新聞

【チャートの概括】 人件費適正化のカナメともいえる「1年間変形労働運営」に関連する設問では、労働基準法と就業規則の狭間で、極めてムリをしながら対応している実態が診断チャートに表れている。しかし、一方ではローコストオペレーションを放棄した安易さに流れているともいえる。それが右側に扁平した回答グラフパターン(点線)であり、人件費適正化の実現には遠かった(実線)。
【基本課題】 就業規則は形の上で整えているが、現実の経営とはマッチングしていない。発想の原点に問題がある。なぜ、1年間の変形労働時間なのかを思い起こす必要がある。これは、シーズン波動の大きな業態に適しているためだったはずだ。ところが法律自体は、適正さは欠くが製造業のオン・オフ生産調整的な発想しかないといってもいい。このため法律で定められた1日の労働時間や休日の付与などが発想の基点になり、本来は「時間」が前提なのにもかかわらず「日」に拘泥している。結果として型どおりの就業規則になり、労働実績時間の社員通知・年間労働時間の予想・シフト管理者の業績評価などを行わなくても済む運営形態となっている。旅館業での生産調整は、固定して決められないことからフレキシブル性が要求される。それを固定したところに悲劇の源がある。ある意味で水モノ的な一面があって生産調整ができないのに、ムリな形の就業規則をつくり、それに当てはめようとすることで出勤人員の過不足が生じ、人件費の適正化が損なわれている。実情を精査し、受注状況(予約状況)の反映と社員の労働意欲向上を、バランスよく反映させるものへの見直しが急務である。
【個別課題】 基本は、まず年間の実勢客室稼働率を想定し、今年度の見通しを社員に説明する。そして稼働率が設定より上がった場合は、残業費が発生するがこれは認める。稼働率が下がった場合に残業費の発生はないはずだが、現状は発生している。これが問題だ。根底には就業規則で出勤日・休日が固定してしいからだ。どう柔軟対応させるかが基本的な課題となっている。したがって、月に何休という与え方ではなく、年間で何日という決め方が考えられる。水モノである以上、見えない予想部分はあえて決めない。月々については予約に連動させて確定する。また客室連動による日々のシフト管理が確実にできていれば、去年の客室稼動と同じケースに当てはまる場合などに、残業費の発生は理論的にないはずだ。そのために1年間の変形労働時間を採用しているはずである。「みなし残業手当」や「残業費込みの年俸制」などで現実を糊塗しようとするところにも問題がある。これでは良質な労働力の確保も難しい。
(企画設計・松本正憲)


(つづく)

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