新 旅館が変わる赤字が消える その19
部門間相互のシフト検討
Press release
  2003.11.08/観光経済新聞

【チャートの概括】 人件費の運営状況を判定するものとして、月間業務管理会議の実施が大きな意味あいをもつ。月間作業管理会議とは、部門別・作業項目別の月間運営実績データを基に、人件費の有効活用を検討する会議と位置付けられ、設問では、仕組みをして機能しているか否かの把握を狙った。これに対して診断グラフは、状況把握以前の問題、極論すれば「労働意識(ないしローコスト意識)を与えない経営」になっていることを物語っていた。人件費の右肩上がり・経営を圧迫している状態を示している。
【基本課題】 この診断結果は、各項目で若干の温度差はあるものの、概ね実施していると経営者は捉えている(回答結果=点線)が、実相はほとんど機能していないのに等しい(実線)。問題の根本は、「部門別・実働解析」が本来の姿で行われていないことに起因する。当面の最大課題もそこにある。
【個別課題】 個々の問題を考える以前に、部門別・実働解析が行われていないことによる悪循環のループを、ここでは指摘しておきたい。例えば人件費については悩んでいるが、解析の意味では踏み込んでいない。単に「人件費が高い」といった捉え方で、「それならば一人減らす」といった対処法しか講じていない。この対処を部門長は了解するが、現場では不足が生じて労働強化・サービス低下・売上機会の損失といった形に表れてくる。また、残業費の発生には注意を与えるが、マイナス面(余剰人員)の指摘がない。部門別実績解析を行っているつもり=錯覚が、運用実績不備の指導欠如を招いている。換言すれば作業時間の基本(シフト)が適切でないことにもつながる。そうなると問題意識を持てずに、シフト項目の変更も必然性がなくなる。部門別に細分化されていないことの弊害がそこにも表れている。さらに、その弊害は「部門間相互シフトの検討」といった発想も妨げている。これらは、「基本がない=説得性がない」ということであり、部門間で相互シフトを実施する際、携わる要員は被害者意識しか持たないことになる。これでは、アイドルタイムをヘルプに活用し、人件費の適正な運営を図ることは難しい。使えない・あてにされないヘルプ実態を払拭するには、社員教育を改めて行なわなければならないが、実際問題としては「社員教育日程の変更」が行われていない。現場に対して教育がないということは、従業員にしてみらば、出世する条件として「要領がいい・ケンカが強い・声が大きい」といったレベルの認識しかできなくなる。そうなると「人員施策の統一見解」など無縁なものになってしまう。すべての関連性を認識して「部門別・実働解析」の仕組みを見直すのが急務である。
(企画設計・松本正憲)


(つづく)

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