新 旅館が変わる赤字が消える その18
作業内容の細分化把握が急務
Press release
  2003.11.01/観光経済新聞

【チャートの概括】 人件費適正化の3回目は、繁閑の著しい作業を、適正人員で効率的に運用する仕組みにスポットをあてた。このため診断設問は、作業シフトの要諦である全社的・多機能的な人員運用の実態把握を狙ったが、診断結果はミクロ解析のなされていない実態を浮き彫りにした。これは、人件費低減を諦めている姿にも等しい。部門別のタテ割による弊害を排除したシステム的な運用体制の再構築が急務である。
【基本課題】 診断チャートの「作業スペック積算表」の実施は、回答の大半で低水準にとどまっている。これに対して「基本シフトの作成」は、ほとんどの回答で高水準に実施されている。実は、このギャップこそがミクロ解析を行わず、人件費の低減をあきらめた状態を示している。そこで早急に対処すべきは、作業スペックの把握である。作業の基礎スペックとは、業務を細分化して捉えることである。例えば、飲材の補充では準備・輸送と収納・後片付けなどに大別できる。現在のそれらを一くくりにした状況下では、個々の作業にロスが潜んでいても見落としてしまう。これには、適正人員の把握といった課題も含まれる。作業スペックを細分化してみると、最初の作業過程は8人、次は5人、さらにその後は3人で対応できる場合がある。ところが、一くくりにされた労働管理だと最初から最後まで8人を貼り付けている。結果として、集中時には不足、アイドルタイムは過剰といった現象につながり、「どの時点で捉えるか」を経営側は悩む。だが、スペックが明確であれば、「どの時点で」を悩む必要はない。そのスペックにあった要員配置を行うだけでよい。鉄則は、作業の「ムリ・ムダ・ムラ」の解消である。
【個別課題】 スペック細分化は、各人の業務内容を明確にすること。自分が今日なすべきことは、何と何かを示すことであり、そこで「シフト掲示板」が不可欠となる。現状は、それを行わずに定員付けをし、それをシフト運営だと思い込んでいる。それは見直さなければならない。基本シフトの作成にしても、大半の旅館にAシフト・Bシフトなどの言葉と形があることから、自館では実施していると考えている。しかし、実際には部屋割りが明確になった時点で、はじめて実効を伴うシフト体制が可能になる。その時に対応できるパターン化されたシフトづくりが「基本シフトの作成」であり、これも対応が急がれる。また、労働実績表の作成では、例えば固定残業費制で残業費を支払わないケース、あるいは1年間単位の変形労働時間制の場合に「足し算はあるが引き算がない」といった実態がある。給与計算のための労働管理ではなく、業務管理の労働実績へ向けて発想転換と実行が求められている。
(企画設計・松本正憲)


(つづく)

  質問箱へ