【チャートの概括】 診断設問では、客数レベルにみあった適正な作業人員の算出・出勤計画などの実態把握に向けて6項目をあげた。診断グラフは、月間休日予定表・希望休日カレンダー運営・週間作業計画・当日作業計画などの作成、予約データの加工伝達、休日変更の伝達などの回答(点線)で、いずれも「確かに実施している」との認識が示されている。しかし、「出勤人員の客数連動」の実勢(実線)とは乖離がみられ、極論すれば、お客様無視の運営実態を物語っている。
【基本課題】 月間休日予定の扱いが、各項に影響を及ぼしている。端的にいえるのは、客数連動の出勤シフトは1カ月以上も前に組むのが難しいにもかかわらず、現状ではそうした月間休日表に沿って出勤者の早番・遅番などのシフトを平然と行っている。これでは、どんなに綿密な作業シフト表をつくっていたとしても、実は形骸化した運営オペレーションでしかない。こうした仕組みを見直すのが急務である。
【個別課題】 週間作業計画の作成では、「月間で決めてある」との意識から、単にそれをトレースする域に留まっている。多くの旅館にみられる出・欠勤の予定は、フロント・接客・施設などが1カ月単位、厨房を1週間単位で決めている。前者は客数をロット(1カ月など一定の単位)で捉え、後者はネット(当日の正味)で対応しなければならない作業現場の論理が働いている。決定後の急な予約は「休日出勤」で対処しプラスアルファの人件費が生じる一方、キャンセルで業務が減っても規定の人件費を払っている。実際の調査データでは「休日出勤手当」「残業手当」が、経営者の想像する以上に膨らんでいるケースが多々ある。これらは、年間単位の変形労働運営を図ることが解消の一策。予約データの加工にしても、現状は手板だけであり、現場での解析が難しく面倒だとして行われていない。結果として担当者ごとの数読みなどムダ動き、あるいは宴会場の後片付けと同時に翌日の宴会をセッティングすれば、翌日の準備作業は2〜3ですむものを7〜8人かけているなど、データ加工を行わないための人件費肥大も招いている。週間作業計画として、金曜日に翌週の月〜日サイクルで宴会場をはじめ膳立などの細部を決め、その加工データを各人に持たせることで、ローコストオペレーションが可能になる。希望休日カレンダーは、繁忙期は会社の都合優先がやむを得ないとしもて、閑散期には連休なども含めて「希望休日」を考慮し、社員のモチベーションを高めることにある。いずれの場合でも、「客数レベルに合致した運営がローコストオペレーションの出発点」であると認識することが、ここでの見直し課題となっている。
(企画設計・松本正憲)
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