新 旅館が変わる赤字が消える その16
金額ではなく必然性を見直す
Press release
  2003.10.18/観光経済新聞

【チャートの概括】 診断設問では、人件費の適正化へ向けた総論的な事項として「労働時間の管理状況」の把握を狙った。診断結果を総括すると、ミクロ解析の行われていない状況が極めて象徴的に表れている。いい仕事をするには「大胆かつ繊細」が必要なのだがが、一般には「大胆」か「繊細」かのどちらかに区分けをして考えようとする。グラフに示された回答結果(点線)は、ある意味での「大胆」を示しているが、実勢評価(実線)と大半は重なっていない。理由は「繊細」の不在であり、ミクロ解析の欠落した実情を意味している。いわば、組織性とのせめぎ合いといってもいい状況がみてとれるわけであり、換言すれば労働時間管理に多くの「ムリ・ムダ・ムラ」が潜んでいる実態を露呈している。ローコストオペレーションを図るには、組織の旧弊として潜む性(さが)を洗い直すことが急務である。
【基本課題】 マクロだけで捉える実態が大半でみられることは、小手先の改革をどのように弄しても成果が出ないことを意味している。ミクロ解析へ向ける姿勢・意識を早急にもつことがマネジメントに課せられた基本課題といえる。
【個別課題】 極めて象徴的な事柄として、人件費・残業費の報告があげられる。回答結果では、ほとんどの施設で「当然、行っている」としている。しかし、そこで行われている報告はマクロに留まっている。しばしば耳にする「人件費がかかり過ぎて…」の言葉も、数値データとして報告されたものに対して、何の解析もせずに受けとめた実態を物語るものでしかない。これでは経営改善が図られず「かかり過ぎ…」のボヤキに終わってしまう。こうした悲劇は、人件費を金額ベースでは捉えているものの、人件費の必然性(運営)に対する見直し姿勢の欠落が生み出しているといえる。本来の人件費・残業費報告は、ミクロ解析に資する基礎データであり、それを読み取って経営改善・黒字化を目指すことが目的なのだが、現状ではこの目的が達成されていない。報告を受ける側で目的意識を明確にもつことが、課題をクリアする出発点でもある。さらにいえることは、人件費・残業費報告のミクロ解析に対する意識の希薄が、他の項目にも派生していることだ。例えば、「定員減時の運営」を適切に行っていないことにも、その一つの表れである。マクロの数値で人件費の軽減を図ろうとすると、必要人員が5人のセクションに3人しか配置しないケースも起きる。不足する2人分は、@労働強化Aサービス低下B販売機会の損失などにつながり、結果として「ムリ・ムダ・ムラ」の悪循環が常に繰り返されている。すべての項目に対し「目的は何か」を問い直すことが必要である。(企画設計・松本正憲)

(つづく)

  質問箱へ