【チャートの概括】 診断設問では、A群=接客部門(シフト表作成、作業指示、作業進捗管理、入れ込み時間確認)とB群=後方部門(作業時間解析、運営クリニック、当日予約の情報伝達、シフト表作成、運営指導者会議、作業指示)に大別し、現状把握を行った。診断グラフの「点線」(両部門の設問意図から統合)で示した診断結果は、A・B群ともに大半の施設でシフト表を作成しているものの、運用面の作業指示や進捗管理が十分でない実態を示している。また、接客部門と後方部門の回答を同時に求めたのは、A・B群の連動度合いを評価した「実線」のデータ(著者の調査データ)との比較を行い、診断結果とのギャップを知ることがローコストオペレーションを実践する上で欠かせないためである。つまり、全社的な運用の視点から両群を俯瞰し、連携をさせる一方でそれぞれの部門の要員構成・要員機能を深耕しない限り「お客様の数より社員の数が多い」といった悲劇を回避できないからである。
【基本課題】 各設問においては、もともと未整備に近い「管理体制とクリニック」を除くと、そのほかは「部門ごとには相応に実施している」となるが、両者を連動させた全社的な視座での実相とのギャップは大きい。これが意味するところは、「部門ごと=全社各部門」といった組織図的発想から、「全社各部門で相応に実施している」と解釈され、さらに「部門」の言葉が欠落して最終的には「全社で相応に実施している」となってしまう。そうした表面的な認識の仕方がギャップとなって表れており、背後に潜む本当の問題点が隠蔽される結果を招いている。これでは、トータルなローコストオペレーションは実現しない。人件費効率を高めるには、全社的な視座で捉えた「部門ごとの合理化」「部門間での効率的な連動性」を前提に、改めて社内の流れを検証することが急務である。
【個別課題】 接客要員であるA群での問題点は、導線にリンクした仕組み(お客様の時系列の動きに合わせた運営体制)ができていないために、必要な接客要員数が30%アップしていることにある。言い換えれば、お客様の時系列の動きに合わせた時間差運営=接客要員の多機能化が不十分で、人件費コストを肥大させている。したがって、接客要員の多機能化に向けた改革が早急に図られなければならない。後方部門のB群では、客数レベルの時間管理をはじめ作業の合理的な洗い直しが不可欠である。人件費効率の面でいえば「総労働時間vs客数」を前提にしたシビアな検証と改善策が求められている。これらを放置したままの現状(ギャップ)が、ローコストオペレーションを阻害している。
(企画設計・松本正憲)
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