新 旅館が変わる赤字が消える その10
ソフト未整備がすべてに影響
Press release
  2003.08.23/観光経済新聞

【チャートの概括】 厨房作業でのチェックポイントは、集中化と標準化・単純化の実施状況を把握し、そこに潜む非合理性を改善することにある。具体的には、原材料の発注や原価管理、作業レベルに合わせた人員配置・管理の状況を把握することだが、診断グラフは、改善点としてソフト分野の不足が目立つ結果を示している。これは、目に見える部分(クレームに直接つながることなど)については実施しているが、厨房運営における抜本的な対策ができていないことを意味している。例えば、メニュー変更に伴う伝達会議などは型どおり行われているものの、その後の作業である残品の管理・整理などを見ると、冷蔵庫の中がゴチャゴチャだったりすることが少なくない。全体を俯瞰した時に、経営者の目につきにくい部分に多くの問題が潜んでいる。換言すれば、集中化・標準化・単純化とはほど遠い実態が浮き彫りにされている。
【基本課題】 診断結果で基本的な問題としてあげられる第1点は、それぞれの担当者レベルで捉えられている仕事の流れが、表面的なものにとどまっていること。例えば「メニューのレシピ化」については、メニュー表は作られているが、作業の指示表などは整備されていない。作業指示の多くは、現場で慣習的に「適宜」行われている。だが、実際に「食材の保管管理」などで、調理長に現時点での仕込み状況を問いただした時、即座に状況が返答されることは少ない。これは厨房の各セクションに任せきっている場合が多いため。しかも、誰が・どのような形で指示を行っているかは、不明瞭な慣習や勘に流れているケースが少なくない。したがって、指示をする人間によって業務の独占が発生し、作業の複雑化や非効率的な流れを日常化させている。作業の指示表は、「全体を把握する」「与えられた作業を適切にこなす」といった役割分担、視点を換えれば、社員とパートの作業分野区分を明確にした効率経営に欠かせない。黒字経営を目指す観点に立ったとき、メニューのレシピ化や運営ハンドブックなどの基本的なソフトの整備は、黒字阻害要因の解消に不可欠である。
【課題総括】 ソフト面の整備はいわば基本であり、日常作業の一環である「食材の保管・管理」「残品の管理・整理」では、相応の設備と管理システムが必要となる。だが、これらの設備や管理システムが有効に機能するのも、ソフトの整備に連動している。また、伝達会議にしてもルールに従った適切な指示の履行で改善の余地が多分にあるし、それ以前に会議の実施そのものがルール化されていないケースの方が目立つ。ソフトの整備が行われていない現状は、早急に改善されなければならないことを診断グラフは物語っている。(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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