新 旅館が変わる赤字が消える その9
危機管理もニーズ対応のカギ
Press release
  2003.08.09/観光経済新聞

【チャートの概括】 @防災・防火A防犯B事故予防・病人対応C衛生管理など危機管理を捉えた診断グラフは、いわゆる受身の姿勢が顕著に表れている。社会問題となった原発事故や食品メーカーの事故など、さまざまな場面で危機管理の必要性が強調されているが、「他山の石」の喩えが生かされているとはいえない。事故などの危機状況は非日常のことであり、厳しい経営環境のもとでは、日常の対応が優先されがちだが、ひとたび危機にみまわれれば壊滅的な打撃を受けるのが必定。ニーズに応える品質目標を下支えする分野として再認識が求められる。
【基本課題】 危機管理事項として掲げた4項目について、総じていえることは、法規制への対応や保険への加入など、必要最低限のことは行われている。ただし、これらは危機に対する受動的な備えであって、未然に防ぐ危機管理意識とはいい切れない。とりわけ危機管理マニュアルは、接客マニュアルなどに比べると整備状況が不十分。施設の変更、合理化等による陣容変更をはじめ、現在の運営状況に合致したマニュアルの見直し・整備が危機管理での急務といえる。
【個別課題】 マニュアル整備はいわば基本であり、万一発生した事故に際して、基本どおりの対応がなされるのが大前提。このための危機管理教育が、平時での重要課題となる。防火・防災に関連した避難訓練は「せざるを得ない」といった義務的条件のもとで相応に行われているが、防犯や傷病になると対応訓練はほとんど行われていない。マニュアルを整備したことですべての危機的状況の発生が未然に防げるとは誰も考えないが、マニュアルがあることで「危機に対応できる」と考えるのも錯覚でしかない。マニュアルに則った訓練を平時に繰り返し、瞬時に対応できる動作を身につけておくことが肝要。危機管理教育は、頭のなかで理解するのではなく、サービス提供と同様に行動と連動したものとのスタンスで徹底させなければならない。また、マニュアル整備と表裏の関係にあるのが、管理体制の確立。連絡・報告、指揮・命令の系統・ルールが明確でなければ、万一の状況に対してスムースに対応できない。日常は使用されない(あってはならない)ことから曖昧になりがちだが、マニュアルと同様に社内状況・体制の変化に対応させた管理体制の整備・周知徹底が欠かせない。このほか衛生管理面では、食中毒等への危機管理として食材や調理機器、手洗いなど相応に保たれているが、大浴場の泉質管理・温度管理・殺菌などの衛生管理(レジオネラ菌をはじめ雑菌類の繁殖防止)も危機管理意識、あるいは「品質保持=ニーズへの対応」としてさらに向上させることが大きな課題といえる。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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