【チャートの概括】 診断グラフは、「はじめに組織図ありき」といった運営手法を示す形になっている。規模の大小を問わず一応の「組織図」は作成され、当該所属部門の役割も決められている。しかし、組織を健全に機能させるための手順や協力体制など社内のシステムが明確でないために、経営者が示すポリシーが形骸化する傾向が表れている。いわば、経営者のポリシーが一方通行の"伝言ゲーム"となり、末端ではポリシーと異質な動きが表出する。言葉は悪いが"デキレース"のようなものが深奥でくすぶっており、労使双方に100%実現の信念に欠けるきらいがある。これではトータルな力が発揮されないばかりか、部門や個人のスタンドプレーを黙認するマニュアル無視・コンセプト不在の動きとなり、結果としてサービス品質のバラつきや経営リソースのロスが生じている。
【基本課題】 「基準の明確化」では、まず必要なことが顧客の満足を第一に据えた基準を明確にすること。これは「ポリシーの明文化」とも連動するもので、そこでは施設・料理・サービスの三位一体となった形が求められる。例えばISOの経営方針や品質方針・目標などが、ポリシーを具現化する際の基準といえる。ところが、旅館商品の特徴は情緒的なものも含めてカルチャーに帰結することから、往々にして経営者の「夢」ばかりが強調され、抽象的な表現がポリシーに据えられている。基準となる「1+1」の計算ルールが十分に理解されないまま「100の位」の計算をしているようなムリが、そこに生じている。したがって、実情に即した基準を再構築する必要がある。
【個別課題】 基準やポリシーを具体的に落とし込んだのがB群の「組織図」「協力体制」「手順」などである。このうち組織図は概ね作成されている。ここで問題となるのは、組織図に基づいた権限委譲がなされてないこと。すべての権限が経営者のポケットの中にある状態では、本当の意味で組織図どおりの組織活動が展開されない。また、限られた人数で組織を運営していくうえでは、権限委譲と同時に組織図のワクを越えた部門間での協力体制が必要となり、これが「協力体制のルール化」につながる。一般に他業務の「ヘルプ」は、携わる人間にとって被害者意識的に捉えられがちである。いわゆる余計な仕事であり、これでは業務遂行での真剣みに欠けるだけでなく、生産性を損なうとともに余分な残業代を発生させるなどのマイナス面が目立つ。そこで作業を標準化して「手順の明文化」が必要になる。これらの点を明確に整理して、社内ルールの確立、運営システムを構築することが、三位一体運営の基本課題をクリアする要件といえる。
(企画設計・松本正憲)
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