新 旅館が変わる赤字が消える その6
コストダウン全体的視点で
Press release
  2003.07.19/観光経済新聞

【チャートの概括】 診断グラフは、全体としての捉え方に乏しいことを示している。したがって、コストダウンも個別的な視点に終始してしまい、手法としての適正さに欠けてくる。また、ニーズの明確化が図られていないために、売上を伸ばす可能性を見失う結果にもなっている結論的にいえば「対売上姿勢」に問題がある。

【個別課題】 A群の「仕入価格交渉」などは、かなり真剣に行われている点は認められる。ただ、仕入先ライバル他社との価格比較は十分といえない。情報のディスクロージャー (企業内容開示)が十分でない状況下では、価格交渉の出発点ともいえる仕入先情報を確実に得ることができない。これは小規模業態の悲劇ともいえる。そうした情報を基にしたいわゆるコストカッターなどが存在できる素地がそこにあるし、実際に彼らによるコスト引下げ効果も認められる。「社内の固定費削減」については、多くの施設で「可能な限り行っている」との自己認識はある。しかし、社員を残してパートを削減、幹部給与を現状維持のままパート給与を下げるなどのアンバランスに向ける視点に欠けている。こうした矛盾は、次の「全体のコスト見直し」といった捉え方が希薄なためといえる。コスト削減においては、部門別に削減要素を洗い直すことも必要だが、全体としての業務の整合性を捉えたうえで、対処する必要がある。

【基本課題】 全体を捉える姿勢の欠如は、背景にB群の「ニーズの明確化」への対応不測といった根本的な問題がある。「どのような商品」を「どのような価格帯」で売るかが明確でなければ販促の手は打ちようがない。例えば、サービスコストを極限までカットしなければならない価格帯のニーズには、当然ながらその範疇に収まるサービス提供しかできない。それにもかかわらずサービスコストのかかる仕組みを捨てようとしない現実が少なからずある。ニーズの帰結としての「満足」は、若干の語弊はあるが「際限がない」ともいえる。極論をいえば、1万円で泊まって1万5千円のサービス内容なら「大満足」に違いないが、ニーズを明確に把握したサービス提供策を講じない限り、こうした価格とアンバランスなサービス提供を続けざるを得なくなる。ここでの対応の基本は、自らのグレードを適正に判断・位置づけることでもある。そのグレードで「満足」を提供できるニーズが、どのようなレベル(客層)であるかを明確に意識し、コストを含む全体施策として構築することでもある。それによって可能性を実情に即した形で絞込み、実現させることにつながる。グレードをはっきりと押さえていなければ、利益の出る体質は構築できない。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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