新 旅館が変わる赤字が消える その5
キャッシュフローと攻め方
Press release
  2003.07.12/観光経済新聞

【チャートの概括】 診断グラフの外側の点線は、現実感として捉え・対応している状況である。しかし実際には内側の実線のように、具体的な内容・対応は十分でないこのギャップに問題が潜んでいる。
【基本課題】 人員減・単価減・付帯売上の各項目で「減」の内容把握・解析が十分でないために、攻め方(販売)の対策で適正を欠いている。デフレ時代は「売上高よりも利益」の発想が前提条件。ところが現状は、売上高を追う従来の発想にとらわれている。課題を整理すると、次の4ステップに集約できる。第1のステップは、現在の状況を云々する以前に「売上確保」への発想転換をする

そのため第2ステップは「利益の積み上げ」を念頭に置くこと。単に客を増やせ・付帯売上を伸ばせといった掛け声は、従来の右肩上がり時代の発想にこだわっている以外の何ものでもない。売上確保のために足元を見直すことが肝心であり、現状の中から利益につながるものはどんなに小さなものであっても確実に刈り取り、それを積み上げる姿勢が不可欠。例えば、わずか100円の消費単価アップでも、それに宿泊者総数を乗じたときは大きな数字になる。この理屈は誰もがわかっているが、「どこの部分」で「どうやる」といった方法が見出せず、消費単価の減少に対して増加させるための対策が講じられていない。マトが絞り込めないのは、次の第3ステップである「客層のミクロ解析」と「マトを絞った営業解析」が行われていないことに起因する。仮に宿泊単価の面で捉えれば低価格層であっても、みやげ品などの付帯売上で利益を確保できる層もある。前述の2つの解析が行えれば対応策もみえてくる。さらにそうした発想・解析・対策が行われたとしても、現実には利益確保が万全とならない場合が多々ある。そこで第4ステップとしてキャッシュフローの認識が求められる。不足分の把握が明確であれば、それを埋めるための方策も単なる掛け声ではなく、「何をどう売るか」に絞り込んだ具体的なものとなる。ところが実際の場面では、月末のキャッシュフローが整合しないのが現状となっている。
【緊急課題】 当月の売上高と利益を明確に把握すること。現状では、客数予想についてある程度の推定をしているものの、売上高になると曖昧さが目立つ。経験則や勘ではなく、数値として把握することである。したがって緊急に必要なことは、キャッシュフローを踏まえて「利益」の出る体質を目指すことであり、予約数と単価に基づく売上高に絶えず目を向け、不足分をどう補うかを、具体的に展開する意識と仕組みをもつことにほかならない。詳細は別の機会に紹介するが、不足分が明確であれば、平日特割などの手法も展開できる。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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