新 旅館が変わる赤字が消える その3
企画は総合力と思い入れが肝心
Press release
  2003.06.28/観光経済新聞

【チャートの概括】 通常の売上で目標の完遂は難しい。そこで、企画の積み上げ方式で補填する。また、企画は総合力が問われるものであり、診断チャート上に現れる図形に大小の違いはあっても、全体として正五角形に近いものであれは、相応の効果は発揮できる。問題はどこかに窪みがあると、全体としての効果を得られないことにある。もちろん、1項目に特化した成功例もあり、その背景には「これをやらなくては」といった経営側の思い入れ、執着心が作用している。その意味で企画は、レギュラー商品づくりのベースにもなっている。
【基本課題】 問題はマンネリ化。ここでは5項目に分解しているが、実際には「イベント+歳時」「セット販売+特別料理」といった具合に展開されている。例えば「忘・新年会プラン」などの歳時企画は、「セット販売+特別料理」の形をとるが、多くの場合に「セット販売」「特別料理」など個々の要素が明確に解析されていない。例えばセット販売はでは、何が特長なのかを明確にするのが第一歩。値引きによる割安感の訴求では、「どの部分が通常より何%安い→ゆえにこの価格」など具体的に納得させる展開が欠かせない。消費者は「何割引=安い」といったバリュー感と同時に、旅館宿泊に対する絶対価格の両者を念頭に消費活動を行っているためだ。そこには泊食分離の考え方も必要となる。「豪華な料理と宿泊でこの値段(1万円)」とアピールするのではなく、料理に8千円程度のクオリティーがあれば、「豪華な料理に2千円プラスで宿泊」といった切り口もある。絶対価格からみた「宿泊2千円」の訴求効果は大きい。この場合、料理は料亭ほかの専門店と競合するが、同等のクオリティーであれば「宿泊」や「温泉」が「2千円でプラスされる」といったバリュー感が魅力として受け入れられる。各項目の個々について内容を明確に掘り下げていないことが、マンネリ化の一因となっている。
【その他の課題】 イベント企画は、年間のキャッシュフローを確保する意味合いと、顧客を楽しませる側面がある。要は、立地条件をはじめ各館の状況に応じて、柔軟な発想が求められる。劇場ではない宿泊施設でのディナーショーもその一つ。また、現状のキャッシュフロー不足に対して、泥縄的に実施されるものではなく、年間を通じた収益計画もとで一つひとつ積み上げるものでなければならない。訴求と同時に、実情に照らした分析・精査が欠かせない。客層との整合が肝心で、他館の成功例がそのまま自館に適応できるとは限らない。商品付企画にしても、消費額を前提にしたプレゼントもあれば、呼び水程度のプレゼントで別の商品販売につなげる企画もあり得る。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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