新 旅館が変わる赤字が消える その2
集客を支える設備投資への認識
Press release
  2003.06.21/観光経済新聞

【チャートの概括】 宿泊・宴会売上のアップへ向けた人員政策では、@シーズン毎人員目標A客室タイプ別目標B大口団体別集客目標Cリピーター集客D設備投資E料理献立の各項目をチェックした。設備投資を除く各項目は、概ね目標値を掲げた計画性がみられるものの、不動産業の原点である設備投資での計画性が希薄である。ただし、ここでいう設備投資とは大規模な投資だけではない。いわゆる「修繕」などを含んだ計画的なリニューアルである。診断チャートでは、6角形の頂点で設備投資項目の大きく窪んだ形が典型的なパターンとして見られる。
【基本課題】 経営ストラクチャーを考える上では「計画的リニューアル+営業利益の確保」が前提条件となる。したがって、設備投資の項目に見られる歪みは、結果として他の項目が計画的に目標値を設定してあっても、商品としてのクオリティーが伴わなければ目標達成が難しくなる道理。チャートの歪みは、こうした実態を示している。基本はキャッシュフローを前提に「売上高の5%を内部投資にあてる」とする発想である。デフレ経営環境の下で投資額を確保するのは厳しいが、計画的なリニューアルを行わない限り顧客の「ニーズ→満足」の構図を満たせない。これは、集客目標の未達につながる。例えば、女性客やファミリー客を念頭に置いたキメ細かな対応によって、集客時点の訴求力が異なり、加えて宿泊時の満足感の達成度合いにも大きな差が出る。客室タイプ別の集客目標などは、こうした要件を掘り下げてリニューアル・具体化することで、目標数値のリアル化が図られ実態に近づく。
【その他の課題】 集客目標を達成する上で「リピーター集客」は重要要件の一つになっている。一方、消費者サイドでは、限られた年間旅行回数を前提にした時、「同じところへ2度よりも違うところへ行きたい」とするニーズが根強い。このギャップを整合させるリピーター施策が必要となる。定期的なDM、再来客と初回客を区分できる内部の仕組み、顧客カードを機軸にした情報管理の徹底、接待係への周知など具体的な方策はケースバイケースで考えられるが、根本的な部分での発想転換も欠かせない。直接的な再来(集客)だけを促す従来のリピーター発想ではなく、リピーターにつながる潜在顧客を掘り起こして集客する手法なども企図されなければならない。いわば、「口コミ効果」を支援・助長させるリピーター施策である。診断チャートで「リピーター集客」がシーズン毎集客・客室タイプ別・大口団体別などの集客目標に比べて取組み度合いが低いのは、従来の発想に拘泥した結果、消費者サイドのニーズと整合させきれない諦め意識など作用しているともいえる。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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