新 旅館が変わる赤字が消える その1
年間の「平均販売価格」意識を
Press release
  2003.06.14/観光経済新聞

【チャートの概括】 宿泊・宴会売上のアップへ向けた戦略では、@価格政策A人員政策B商品政策の3項目が自己診断の対象。今回は第1項目の価格政策をみた。ここでの狙いは、年間を通した価格発想の有無を把握することであり、「客室タイプ別価格設定」「料理別価格設定」「シーズン毎価格政策」「イベント価格設定」「特別施策価格」の5つについてチェック項目を設定した。結果は下図のように大半が歪んだ五角形になっている。とりわけ「特別価格施策」は、チャート上で顕著な歪み要因として表れている。
【基本課題】 予約の間際化が顕著になっている状況下では、先を読みきることが難しい。このため、状況を後追いする泥縄的な施策に終始するケースが多い。価格施策のポイントは、年間を通した「平均販売価格」を設定し、これをベースにシーズン波動やイベントなどの諸因子を考慮しながら、年間販売目標を達成することにある。自己診断で「特別施策価格」の対応が低いのは、逆説的に捉えると年間の平均販売価格を設定していないことを露呈している。換言すれば年間販売目標を達成するための根拠となる数字を明確にしていないわけで、場当たり色が強いことを意味している。これでは、経営資源の合理的な展開は難しい。
【その他の課題】 「客室タイプ別価格設定」や「料理別価格設定」はなされているが、状況やニーズの変化に対して形骸化しているケースが少なくない。とりわけ、販売価格の低下にスライドさせた料理原価率は、「ニーズ=満足」の構図を度外視する結果にもなっており、利用者のニーズと原価率を整合させる新たなメニュー構成・提供の方法など多くの課題を内包しているといえる。
 また、シーズンごとの価格政策では、従来の「休前日」「オンシーズン特定日」「オフシーズン」といった区分はなされているが、黒字化へ向けたいま一歩の突っ込みに不足感がある。対前年実績・予約現状・進行中の営業などをもとにしたシミュレーション、さらに年間を通じた「平均販売価格」に対する価格施策そのものの意識に問題がある。それを顕著に示しているのが、「特別施策価格」の希薄な実態である。例えば、平日をオフデーと捉えた「平日特割」をはじめ、間近の予約状況に照らして柔軟に対応できる価格政策の策定、販売チャンネルや消費者への訴求方法(告知宣伝)などで多様な施策が必要とされる。このほかイベント価格設定では「イベント=多客=オンシーズン価格」といった従来の発想にとらわれる限り、対象が見当たらないなどの理由で関心度が低くなっているが、地域の埋もれた年中行事などを発掘して商品企画に反映させるなど、需要を自ら創出する価格施策として捉える必要もある。
(企画設計・松本正憲)

(つづく)

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