続 旅館が変わる赤字が消える その28
1年間変形労働運営の活用へ
Press release
  2002.11.23/観光経済新聞

ニーズ対応の自己診断−黒字経営J

 人件費適正化の5回目は「1年間変形労働運営」を考える。

【基本スタンス】
法定労働時間の遵守は、労働環境を整備するうえで最低条件の一つになっている。ところが、季節・曜日波動の大きな業態では、単純な対応では経営に大きな負担を強いるだけ。かねて、年間変形労働時間による運営が模索され、実際に取り入れるケースも少なくない。オン・ショルダー・オフを年間・月間・週間で変形させ、週40時間労働体制を確立することは、社員の労働環境を改善する以上に、残業や休日出勤手当などの軽減につながり、人件費面での経営改善に少なからぬ影響をおよぼす。ここでは問題点と対応策を改めて整理する。

【施策内容】
以下7項目が中心。

@就業規則の改正
 年間変形労働時間を導入する際に、導入前の就業規則をそのまま流用すると整合を欠くことになる。適切な改訂によって監督署の是正処置を受けないようにしておくことが肝要。したがって、改訂の有無だけでなく、各部に対して現状との整合を図る姿勢も問われる。

A賃金規定の見直し
 日々の業務運営に当たって不備が生じた場合、それを指摘し是正するのは当然。年間変形労働時間への対処はもとより、賃金と運営実績のバランスがとれなければ、賃金規定の見直しは不可欠。その場合、単なる"変動相場制的"な場当たりではなく、賃金体系としての明確なルールがなければならない。見直し姿勢と仕組みを総合的にチェックする。

B研修の開催
 新しい仕組みを導入する際に運営内容を周知徹底するのは当然のこと。さらに目的・主旨を理解させる必要もあり、社員研修会等を開催して徹底させる。研修の実施と周知度の把握状況が要チェック。

C採用時の説明規定
 これも当然ながら実施されなければならない項目。ここでのチェックは、採用担当者が複数であっても、誰もが同じ説明を可能とするマニュアルの整備状況にある。

D労働実績時間の社員通知
 この項目は、年間変形労働時間を実施する際の基本的なものの一つ。内容は、月別に繰り越した労働時間を社員に通知し、実態を把握させる。明確を期すことが肝心であり、告知する仕組みの整備状況が問われる事項。

E年間労働時間の予想
 年間変形労働時間を導入しても、それが実際の経営面で人件費効果として表れなければ意味はない。その前提になるのが年間を通じた予約客数の予想であり、それを基に年間労働時間が2,085時間になるシミュレーションである。検証をどこまで行っているかを把握する必要がある。

Fシフト管理者の業績評価
 人件費におけるムリ・ムダ・ムラを解消するためには、シフト運営に携わる管理者が、客数レベルと運用実績が適正であるか否かを業績として捉える必要がある。仕組みの有無と実情がチェック事項。


(つづく)