続 旅館が変わる赤字が消える その24
労働時間の適正な管理を
Press release
  2002.10.26/観光経済新聞

ニーズ対応の自己診断−黒字経営F

 黒字経営を目指すニーズへの対応策として8項目を掲げ、第1項の「業務内容の見直し」を6回にわたって検証してきた。本稿からは、「黒字の出る仕組みの下で健全な経営体質の確立」として大きな意味あいをもつ「人件費の適正化」に視点を移す。ここでのポイントは、利用客数に応じた適切な人員配置を検証し、労働生産性の適正化を図り、人件費の適正な運用を自己診断することにある。
 基本的には、労働時間の管理、出勤人員の客数連動、作業シフトの作成、月間業績管理会議、1年間変形労働運営、予約客数の連動、当日対応ミーティングなど7項目を捉える。1回目は労働時間管理を見直す。

【基本スタンス】
労働時間の管理では、「ムリ・ムダ・ムラ」のない労働時間の運用が狙いとなう。そのためには、部門別および作業項目別に月間の総騒動時間を洗い直し、適正化をはかることが第一歩となる。

【施策内容】
 以下6項目が中心。

@人件費・残業費の報告
 ここでの狙いは、労働生産性を確実なものとするのが第一義となる。したがって、部門別の人件費と業務推進に伴って発生した残業時間を、経営見地から的確に把握できる「報告」の仕組みを検証する必要がある。また、シフト運営を効果的に実行するためには、シフト管理者のスキルアップもかかせない。仕組と教育・意識の両面でチェックすることがポイントとなる。

A変形労働時間の運営指導
 繁忙期の残業代、閑散期の(固定的な)人件費など「繁閑」に伴う人件費の非効率やムダな残業に対する支出は、確実に見直して改善することが基本。そうした際にチェックすべき事項の一つとしてあげられるのが、1年間単位の変形労働時間制度をどこまで有効に活用しているかがあげられる。同時に、運営面でそうした指導を行っているか否かも問われる。

B年間予約数の検討会議
 合理的な作業時間の管理において、基本となるのが年間の予約客数を基にした1年間の労働時間シミュレーション。最終的には、そうしたシミュレーションの中身が問われるが、その前段として検討会議の実施や位置付け・経営面への反映状況をチェックする。

Cアルバイト活用計画書の作成
 繁閑に対応した短期間作業者(アルバイト)の採用は、多くの場合に一般化しているが、いわゆる泥縄的ケースも少なくない。したがって、シミュレーションに基づく計画性の有無がここでは問われる。

D人員採用計画
 基本は、母集団形成が良好な採用月と自然退職者の減少率を、相関的に捉えた採用計画を実施しているか否かが要チェック。

E定員減時の運営方法計画
 狙いは、定員数が減少したときの運営方法を確定すること。その運営方法を社員に認知・徹底することで、ムダな人件費や採用コストの減少を図る。そうした意識や仕組の有無が問われる。


(つづく)