続 旅館が変わる赤字が消える その16
事故・傷痛対策も不可欠
Press release
  2002.08.31/観光経済新聞

ニーズ対応の自己診断−危機管理B

 危機管理の3回目は事故の予防と病人が出た場合のについて。

【基本スタンス】
  前2回に分けて掲載した防災や防犯は、万一の場合に管理責任を問われるケースが発生しやすい。これに対して事故や傷病は、特異なケースを除くと管理責任の面だけでは対処できない事象もある。また、顧客の健康状態にかかわる問題などは、予防の観点にたつと一定の制約要素もある。しかし、万一発生した場合には、その対応いかんによって評価は二分する。したがって、危機管理の一環として日ごろから緊急対応を講じておくことが大切だといえる。

【施策内容】
 以下6項目が中心。

@事故予防・病人対策マニュアルの作成
 危険区域への進入による思わぬ事故をはじめ、適正な管理がなされていても事故の発生するケースがある。また、不用意に放置したものが事故につながるなど、万一の事故を未然に防ぐのは難しい。それが「万一」たるゆえんでもあるが、ゆえに「やむなし」と手をこまねいていることは許されない。必要に応じた事故予防のチェックやそれにかかわる日常的な手順、万一発生した場合の対応マニュアルの作成と配布実態が、ここでのチェック項目である。これは事故だけでなく、病気についても同様である。

A救急救命士や必要な資格の取得促進
 理想的な形の一つとして、救急車が到着するまでの応急救護ができる救急救命士の養成がある。また、必要に応じて看護・介護のできる人材を確保しておくことも望ましい。ただし、それらを必要とする事態が頻発するわけではなく、緊急事態を想定したときの一歩進んだ対応策である。しかし、その前段の状況に対処できるスタッフを養成しておくことは、今後のサービス業のあり方として望まれている。そうした認識の有無が問われる。

B予約の際の情報収集
 顧客の健康状態に対して、情報収集のできる仕組が必要だということである。健康上の問題は、もとより個人の責任に帰す問題ではあるが、そうした情報を事前に収集しておくことで、万一の際により的確な対応が可能となる。高齢社会では対応が不可分のものとなり得る。

C館内外の定期巡回
 大浴場や駐車場など事故の発生する可能性の高い場所ごとに、実施順位・頻度などを定めて定期的に巡回チェックをすることが欠かせない。実施体制の整備と現状における実施状況が要チェック。

D必要箇所への監視カメラの設置
 基本は定期巡回では対応できない箇所への対応策である。ただし、ケースバイケースであり、設置箇所の選定には慎重さも必要。

E旅館賠償背金保険の加入
 万一のケースで広範な対応が可能な旅館賠償背金保険への加入は、原則ではなく必須。加えて、時代に対応した補償額であるか否かもポイントになってくる。

(つづく)