続 旅館が変わる赤字が消える その13
集計し「評価」を活用する
Press release
  2002.08.03/観光経済新聞

ニーズ対応の自己診断−サービス評価A

【基本スタンス】
 自館のサービスレベルを適正に把握するうえで、利用者アンケートは有効な手だてである。多くの旅館・ホテルで実施されているが、活用の段になると、いわゆる「クレーム収集」の域にとどまり、利益向上への積極的な活用は十分といえない。これは、多くの場合に「実施」への取組み意識に問題もあるが、一方で「評価」を前提にした整理・活用の仕組みが未形成といった要因もある。前回の「実施」を踏まえて今回は「評価」にスポットをあてる。アンケートを回収した後は、当然ながら回答された個々の内容を集約し、全体像を描くことになる。この結果がサービスレベルの評価となる。作業としては、個々のデータ入力と全体を捉えた分析・評価となるわけだが、そこにサービスの向上と「自社の利益」との相関性をもちこむ発想が、これからは欠かせない。

【施策内容】
 以下4項目が中心。

@単純集計
 設問ごとの回答を集計するものである。例えば「大変満足・満足・普通・不満・大いに不満」といった5択回答で、「大変満足」が何パーセントといった単純な集計方法である。回答サンプルの数によっては、評価が大きくブレルことがある。同じ20%でも、分母が10と100では、分子の増減で結果が大きく違ってくる。したがってサンプル数が少ない場合など「あまり意味がない」とみられがちだが、回答傾向を時系列的に整理することで別の見方ができる。例えば、「部署ごとの改善目標」に対する反応を設問に盛り込んでおけば、改善の推移を時系列で追うこともできる。継続することが大切であり、それによって一定の評価基準になり得る。

Aクロス集計
 単純集計では、各項目に対する反応を時系列に捉えることは可能だが、再利用意向に貢献している要素を読み取ることは難しい。設問ごとの満足感を関連づけながら、何が再利用意向に作用しているかをデータとして捉えるのがここでのテーマである。それがクロス集計と呼ばれるものであり、最近ではアンケートソフトなどを使うことで、比較的に容易化されてきた。また、アンケートの「設計」段階において、クロス集計を念頭においた発想の有無などが問われることにもなる。

B見込み客の抽出
 アンケートの役割には、サービスレベルを客観的に捉えるのと同時に、利用者を識別する要素もある。いわゆる顧客評価であり、再利用意向のある満足客を「見込み客」として抽出する機能である。これは、情報管理で触れた「顧客の資産化」でもある。

Cサービス向上の対営業利益効果
 どんなに満足度が高くても、赤字では経営が成り立たない。そこで、サービス向上が償却前営業利益(ないし売上)にどれだけ寄与しているかを、アンケート評価との相関関係から読み取らなければならない。評価の最終的な姿勢としてこの点を欠かすことはできない。


(つづく)

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