続 旅館が変わる赤字が消える その8
基準とポリシーの明確化 |
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ニーズ対応の自己診断−サービス理念
前号までは、売上アップへの基本的部分について自己診断を試みた。今回からは、売上アップの基本で触れた「ニーズ」に絞り込み、「期待を超えるサービスの提供」をテーマに現状把握の自己診断を行ってみる。狙いは「一定レベルのサービスを提供することで顧客の離反を防ぎ、個々のお客様の期待に柔軟に対応できるサービスでファンづくりを実践する」ことにある。
そこで、最初に明確化を図らなければならないのが、自館の「サービス理念」である。これは「ミッションステートメント」といわれるもので、自社の提供するサービス価値を明文化し、全社員がそれを共有することでサービスの向上を図るものである。いわば、サービス向上への具体的な施策の第一歩である。自己診断では、「A群」として「お客様への約束の明文化」、「B群」として「約束のルール化・マニュアル化」に分けて考える必要がある。
(A)お客様への約束の明文化
ここでは、以下の2点がポイントとなる。第1の約束は、顧客の離反を防ぐ最低限の「サービス基準」、第2の約束がファンを増やすための「サービスポリシー」である。
@サービス基準の明文化
最低限のサービス基準とは、別のいい方をすれば「約束違反を起こしてはならない基本的なサービス」である。実際には「安全・清潔・確実・礼儀」をはじめとしたベーシックなものであり、これらを明文化しているか否か。さらに全社員が共有化しているかが重要なチェックポイントである。
Aサービスポリシーの明文化
基本的な狙いは「ファンづくり」にある。サービスポリシーを明文化し、前項と同様に全社員の共有化を図っているか否かが問われる。また、明文化においては、他館と比較をしやすい内容であることも大切である(差別化が容易)。
(B)約束のルール化・マニュアル化 A群に掲げた明文化は、サービス現場で具体的な形をとることによって、はじめて効果を発揮する。したがって、サービス理念を「絵に描いた餅」にしないためには、業務の遂行体制や手順をマニュアル化して全員が所有しなければ具体化はできない。実際には、社内の組織図、ルール、サービス手順などの明文化である。
@組織図の作成
社内における「個人」の「所属と役割」を明らかにしたものが組織図である。CS(顧客満足)を推進する企業では、「社長が下、お客様が最上段」の『逆三角ピラミッド型』が一般的で、社内においても上位の者を顧客同様の「社内顧客」とみなしている。したがって、明確な組織図が作られていることと同時に、こうした認識の有無も要チェック事項である。
A協力体制のルール化
社内での協力体制をルール化することは、最低限の陣容(人数)で最大限の生産性をあげるのが狙いである。部署内および部署をまたがる相互協力の体制を、ルール化しているか否かが問われる。
Bサービス手順の明文化
サービス理念を現実の「顧客対応の場」で実現するには、各部署が「サービス基準・サービスポリシーの『どの部分』の実践にあたるか」を明記したサービス手順書(マニュアル)が必要。単にマニュアルの有無でなく、明文化の状態(適正・完成度など)もチェックが必要。
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(つづく) |
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