続 旅館が変わる赤字が消える その7
根底に「デフレ時代」確認
Press release
  2002.06.22/観光経済新聞

売上アップの自己診断−コストと商品

 売上アップの方策を考えときに、現在の経済環境下では「デフレ時代の売上アップ」といった視点が欠かせない。いわば、攻めと守りのバランスを図った「利益」の創出が欠かせないということである。目先の売上アップ策では利益の確保は難しく、逆に健全経営の足を引っ張るケースが少なくない。

 自己診断にあたっては、「A群」として「コスト削減」に対する姿勢、「B群」として「商品設定」への取り組み、デフレ時代そのものの捉え方などを検証することが肝心である。

(A)コスト削減
 現在の経況下では、売上アップと同等に必要なことが「コスト削減」である。仮に売上が前年と同じであっても、経費を下げることによって利益が「増収」となれば、売上アップに等しい経営効果が得られる。

@価格交渉
 変動費である食材や消耗品などの仕入原価を見直す。出入の商社をはじめ仕入先などとの取引実態を洗いなおすことが、コスト削減の大きなファクターである。

A固定費の削減
 人件費をはじめ「固定費」の見直しに注目する。前項が対外的な見直しなのに対して、この項目は社内的な施策と位置付けられる。

B全体的なコストの見直し
 上記の2項目のほかに、日常の業務遂行に潜んでいる「ムリ・ムダ・ムラ」を徹底的に洗い出し、これらを解消することがコスト削減に大きくかかわってくる。いわゆる『構造改革』を推進することで、バブル経済下で堆積してしまった不用意な経費支出は、徹底的に是正しする姿勢が求められている。その姿勢の有無がチェックポイント。

(B)商品設定
 外へ向けた攻めとしてB群の「商品設定」の発想が求められる。デフレ経済下では、バブル期以上に細心な施策が必要である。

@ニーズの明確化
 どんな時代もニーズを的確に捉えることは欠かせない。肝心なことは、「顧客のニーズを整理して、自館にあったニーズに特化する姿勢」である。バブル期のそれは、背伸びをしてでも「より高度な対応」が趨勢であった。結果は、過剰投資であり過剰なまでのサービスの追求となり、それらがデフレ期になって「負の資産化」をみせている。したがって、「自館にあった対応」といった発想で商品化政策に臨んでいるか否かが問われる。

Aどうすえば可能か
 結論からいえば「サービス・料理・施設などに強弱(メリハリ)をつけて独自性を出す」といった点に帰結する。前項のニーズへの対応とも関わり、さらに背景としてA群の展開がなければならない。これらの具体化は、各館各様の実態に則したものであり、定型化はできない。肝心なことは、その発想ないし対応をどこまで取り組んでいるかである。

(C)デフレ時代の経営
 上記A・B群を総合的に捉える。
売上に固守せず 言葉としては理解できるものの、現実の経営現場に落とし込む発想は難しい。デフレ経済下の経営について筆者は、「これまでのインフレ経済下の右肩上がりで成長を続ける売上と違って、伸び率は低くても利益を確保し、キャッシュフローの向上に重点を置く発想が欠かせない。売上の向上を焦らず、時代の流れの中で成長していく企業を目指す」と捉えている。こうした捉え方の有無がここでのポイントである。


(つづく)