続 旅館が変わる赤字が消える その6
売上ダウンの状況解析を
Press release
  2002.06.15/観光経済新聞

売上アップの自己診断−売上と旅行形態

 今回は、視点を変えて「売上ダウンの理由」を捉えてみる。こうした理由解析は「いまさら」の感が強く、ややもすると見過ごされがちだが、状況を適切に把握する姿勢が大切である。もちろん、理由が分かったところで現状が打開できるわけではなく、次号で示す「売上アップ」の方策とセットで考察すべきものである。
また、状況が悪化してくると、とかく「手っとり早く」の意識が先行して理由解析がおろそかになってしまうが、これでは新たな状況の変化に対応できず、同じ轍を踏むことになりかねない。
 理由の自己診断にあたっては、「A群」として「売上」の内容、「B群」として「旅行の形態」のそれぞれの視点から、日々に感じていることを系統立てて整理することが大切である。

(A)売上
 ここでいう売上とは、シンプルに捉えると「人員×単価+付帯売上」と定義することができる。

@人員減
 この点については、度合いの強弱を別にして「減少している」と感じているケースが多数を占めている。肝心なことは、「1室4〜5人利用→1室2〜3人利用」など、減少の具体的な内容を把握することである。そこに「時代の変化」を読み取り、新たな発想を生み出す要素が潜んでいる。経験則や勘でマクロを捉えるのではなく、ミクロの実相まで数値的に捉える姿勢の有無が大切である。

A単価減
 バブル経済が崩壊して久しい。現下のデフレ経済で価格の低迷が及ぼす影響は、改めて問うまでもなく大半は何らかの形で実感している。要は、状況を嘆くのではなく、変化に対応するための冷静な視点で捉えているか否かである。

B付帯売上の減
 飲み物、クラブ・スナックなどの館内施設、売店の売上がどう変化したかの把握である。この場合、時系列的な変化を比較検討する姿勢が肝心である。例えば、団体旅行が中心だった時代と現在では、具体的に何がどう変わったかなど、経営者の視線で把握しておくことが欠かせない。

(B)旅行の形態
 旅行形態については「非日常性であった旅行が、気軽に旅行をする時代になった」といわれ、消費者の意識は大きく変化している。ハード・ソフトの両面で、こうした変化にどう対応しているかが、赤字解消・黒字化への一つのカギでもある。したがって、変化に対しての把握姿勢が、ここでのチェックポイントとなる。

@旅行人員
 前項の人員減を旅行形態の面から捉える姿勢である。例えば、団体旅行から個人・グループへの形態の変化は、多人数から少人数への転換であり、事前の準備一つにしても「気軽さ」の度合いが大きく変わっている。自館に表れている変化を具体的に捉えているか否かが、現実的な対応で欠かせない。

A旅行経費
 売上に直結する部分であるが、これも形態の変化と大きくかかわっている。社員旅行や接待旅行など、いわゆる会社の経費で旅行をしなくなった。その実相を的確に把握しておくことが大切である。

B接待旅行
 上記の点と通じるもの。いわゆる官官接待などの問題もあって、役所の利用が大幅に減少している。また、会社などの接待も経費節減のために減少している。具体的な把握の度合いが、今後の対応策につながるチェックポイントである。

(つづく)